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Real Fantasy物語 ~勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記~ -セインティティア共和国篇- NEW!

 2025-09-20

 

元になるお話はこちらから「勇者ジェミニの伝説

前回のお話はこちらから「勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記 -バルドティア王国編ー

 

 

 

バルドティア王国を出発したジェミニたちは、セインティティア共和国に向けて歩みを進める途中、リベルナの村の近くにあるヒスイの森に立ち寄ることにしました。

 

「へー、君はここで過ごしてたんだね。アレーシャの森と比べると日が差し込んで明るいし、穏やかでいいところだね。」

「ああ。もう少しすると、俺が住んでた小屋だ。」

 

小屋に近づくと、突然木の陰から何かがとびかかってきました。

 

「うわあっ!!魔物!?」

「シャルム!!元気だったかあ、シャルム!ははっ!」

 

それは闇のジェミニが一緒に暮らしていたという狼でした。

 

「びっくりしたよ!この子がシャルムかあ。はじめまして、シャルム。僕の名前もジェミニっていうんだ。君の友達の友達だ。よろしくね。」

 

「シャルム、ちゃんと飯食ってるか?……ん?お前毛艶がいいな。」

 

「おや、ジェミニじゃないか!帰ってきたのかい。」

 

「メリーベル!そうか、あんたがシャルムの世話をしてくれてたんだな。すまない。」

「ああ。この子は相変わらず賢いね。いい子にしてたよ。それにしても、あんたがここに人を連れてくるなんて珍しいじゃないか。」

「ああ、ちょっとわけあって一緒に旅をしてるんだ。こいつはジェミニ。俺と同じ名前のちょっと変わったやつだ。」

 

「へぇ、そうなのかい。って、あんたたちそっくりじゃないか。いやあ驚いた。どういう偶然だい。」

「はは。まあ、またゆっくり話すよ。ちょっとあいつの墓参りにいってくる。ジェミニはここで待っててくれ。」

 

そう言うと、闇のジェミニはシャルムと一緒に森の奥に行ってしまいました。

 

「え、あ、うん、わかった。」

「しかし本当にそっくりだね、あんた。なあジェミニ君、あの子の相手は大変だろ。あの子は疑い深いし、天邪鬼だし、他人には基本冷たいからね。」

「うん、まあそういうところもあるけど、でもいいやつだよ。ここまでいろいろと冒険をしてきて、困難を乗り越えてきたけど、たくさん助けてもらったんだ。とても信頼してる友人だよ。」

 

「はあ〜、あの子に友達ができるなんて、サイオウが生きてたら泣いて喜んだろうねぇ。」

「サイオウ?ああ、彼の育ての親のことかい?」

「そうそう。サイオウのことは聞いたんだね。あいつは元々セインティティアの大魔道士でね。セインティティアは魔力によって階級が分かれていて、代々魔力の一番強いやつが国王だったり、国を統治する幹部だったりになるんだ。あいつは国王候補だったんだけど、それを嫌がってね。それでリベルナに移り住んできたんだよ。ただあの子を引き取ってしばらくしてからこのヒスイの森で暮らすようになってね。」

 

「そうだったんだね。メリーベルさんはサイオウさんの友達なのかい?」

「ああ、セインティティアにいた頃からの腐れ縁さ。サイオウが亡くなる前にね、あの子のことを面倒見てやってくれって頼まれてさ。それで時々様子を見に来てやってるんだよ。まったく、あんな扱いづらい子の面倒を見ろだなんて、厄介ごとを押し付けてさ。いつだってあいつはそうだよ、あっはっは。」

「ははは、仲が良かったんだね、メリーベルさんとサイオウさんは。」

「そろそろ夕方だから、夕飯の支度でもしようかね。あんたたちせっかくだから今日はここで一緒に食べていきなよ。」

 

そういうと、メリーベルは小屋に入り支度をはじめました。

 

「あ、おかえり。」

 

ほどなくして闇のジェミニが戻ってきました。夕飯の話を伝えると、闇のジェミニは少しだけ緩んだ表情で火を起こし始めました。

 

「何やってるんだい?」

「火をつけてるのさ。こうやって、木をこすり合わせるんだ。」

「わ、すごい、煙が出てきた!え、本当に火が出たよ。こんなやり方があるんだね。でも結構大変そうだ。」

「俺の育ての親、サイオウはよくこうやって楽しそうに火をおこしてた。魔法で火を出せば簡単なんだけど、そうじゃなくてこうやって自分の手で、道具を使って工夫と努力で火を起こす。これが面白いと。……よし、いい感じだ。」

 

気づくとあたりが暗くなっていました。パチパチと音を立てながらくみ上げられた木が勢いよく燃えています。

その明かりをぼんやり眺めていた闇のジェミニは、おもむろに木で作られた笛を取り出しました。

 

「これはサイオウからもらったんだ。ずいぶん苦労して作ったらしく、確かにいい音がする。」

そういうと闇のジェミニはその笛を吹き始めました。

静寂の中に木が焼ける音と、笛の音が響き渡ります。

 

「綺麗な音だね。」

 

「火も笛も、魔法を使えばあっという間に具現化できる。そして魔法は時に、0から1を生み出すけど、とてもつまらない。魔法がなければ頭を使うしかない、そうやって工夫して生み出されたものがとても愛おしい……あいつはよくそんなことを言っていた。今ならそれがなんとなく分かる気がするよ。」

 

「お、久しぶりに聞いたよ、その笛の音。相変わらずいい響きだねえ。さあ、夕飯の支度ができたよ、冷めないうちに食べておくれ。シャルム、あんたも今日はご馳走だよ!」

 

ジェミニたちは火を囲みお腹いっぱいにご飯を食べ、穏やかな時間を過ごしました。

 

「それで、あんたたちはこれからセインティティアに行こうとしてるわけだね。それなら気をつけていくんだよ。少し前に政権が交代してね。新しい幹部に入れ替わったんだ。そいつらは革新派の連中で、だいぶ国も街も雰囲気が変わっちまったよ。」

「その話しぶりだと、あんまり良くないみたいだな。」

「ああ。元々セインティティアは、魔力の強さで階級がわかれていて、それによって住む場所も発言権も裁量権も違うんだ。つまり簡単に言うと、魔力が強いやつが偉い、という構図になってるんだけど、それに拍車がかかってね。弱者が虐げられるような状況になっちまって、幹部の連中はやりたい放題だよ。」

「虐げられる?」

「ああ。魔力が下の階級ほど上納金だって高いんだが、それが一層高くなった。さらに階級によって買えるものにも制限をかけられちまってね。食料を確保するのだって一苦労さ。」

「魔法が弱いやつは国にはいらないとでも言いたげだな。」

「その通りさ。それ以来、階級の低い魔道士はどんどん国を出ていくし、逆に腕に自身のある魔道士が移り住んでくることも増えた。魔法が強いほどいい生活ができるから、必然だよね。まったく、どういうつもりなんだか。強い魔道士を集めて、他国に戦争でもしかけるつもりかね。」

 

「確かに、俺がサイオウから聞いてた様子とはずいぶん違う。セインティティアは強い結界がはられていて魔物は近づけないようになってるから、上流階級の魔道士たちはさぞかし平和ボケした贅沢な暮らしをしてるんだろうな。」

 

「それは、外部の旅行者にも同じような扱いなのかい?魔法がほとんど使えない人だっているでしょ?」

光のジェミニが訊ねると、メリーベルはすぐに答えます。

 

「旅行者も関係ないね。外部からの人間も魔法力によって立ち入ることができる場所が制限されているよ。」

「え!じゃあ僕なんて街に入れないんじゃないか!?魔道士ジェミニ君、どうやら僕は外でシャルムとお留守番になりそうだよ。シャルム、君と仲良くなれそうで光栄だよ。」

 

光のジェミニはがっくりと肩を落としました。

シャルムはその様子を興味深そうな目で眺めています。

 

「何を言っているんだ。大丈夫だ、少なくとも第1エリアには入れるから問題ない。ひとまず明日、セインティティアに行ってみようぜ。」

「さて、そろそろあたしはリベルナに戻るよ。あんたたち、本当に気をつけていくんだよ。もし何かあったら、魔法研究所のネコイチのところに行ってごらん。あたしの名前を出せばきっと力になってくれるよ。」

そう言うと、メリーベルは笑顔で別れを告げリベルナに戻っていきました。

 

翌朝、ジェミニたちはセインティティアに向けてヒスイの森を後にしました。

 

セインティティアに到着した2人は入口で入念なチェックを受けます。

「ほお、貴様は第4エリアまで行っていいぞ。そしてそっちの貴様は、ははっ、なんだお前も剣士か。貴様は第1エリアまでだ。」

入口の魔道士は馬鹿にしたような言い方をし、入国審査証をこちらに投げ渡しました。

 

「えっと、第1エリアって……?」

「剣士なんていう非先進的なやつらが行くことができる、一番下の階級のエリアだ。貴様はそこまでだ。安心しろ。広いし人も多いし、店も多いからしばらくは飽きることなく過ごせるぜ。さっきも旅の剣士が入国してきたところだから、友達だってすぐできるだろうよ。剣を2つも下げた頭の悪そうな奴だ。はっはっはっは!」

「わ、感じ悪い人だなあ。」

「行くぞ、かまうな。」

 

二人は入口を抜けると街の奥へと進んでいきました。

 

「すごいなあ、扉も自動で開くし、馬がいない馬車がひとりで動いてるし、なんだか不思議な光景だよ。」

「ああ。ここはすべての動力源が魔法だからな。魔法の力でなんでもやってしまうんだ。人々の魔法エネルギーを国にある中心の大聖堂に集約させて動力に変えているんだ。」

「へー、だから魔力が強くてたくさん納められる人が偉いわけか。」

「そうだな、基本的な考え方はそうなんだが、今はそれが変に歪んで、人としての生活の格差になっちまったわけだな。」

 

しばらく進んだあと、闇のジェミニはこう言いました。

 

「今から俺は第4エリアに行ってくる。会いたい人がいるんだ。俺を強くしてくれる人だ。数時間で帰ってくるから、お前はどこか適当に見ててくれ。」

「うん、わかったよ。ごゆっくり。僕は街をいろいろと回って見てみるよ。」

 

会話をした後、闇のジェミニは足早に街のさらに奥へと行ってしまいました。

 

「さて、僕は何か楽しそうなお店でも探してみようかな。……あれ、ここってメリーベルさんが言ってた魔法研究所じゃないか。第1エリアにあるんだねぇ。あとで行ってみようかな。」

 

光のジェミニはいくつかお店を訪れた後、魔法研究所を訪れました。

「こんにちは。ネコイチさんって方いますか?」

 

「んん?今日はやけに客が多いな。さっきの双剣のやつといい、お前さんといい。それで、この魔法研究所になんの用じゃ?」

「あ、こんにちは。えっと、メリーベルさんからネコイチさんを訪ねろって言われたもので。」

「おお、あんたメリーベルの知り合いか。よく来たな。わしがここの所長のネコイチじゃ。」

「あ、どうも。僕はジェミニです。テラスの村から来ました。ここはいろんな不思議なものがあるんですね。全部魔法道具ですか?」

 

「ああ、そうじゃよ。ここはその名の通り、魔法の研究をしておるところじゃ。セインティティアは魔法大国。日夜魔法の発展に力を入れておるのじゃが、魔法は一部の魔道士の専売特許みたいなもんじゃろ?わしは魔法が大して使えんから、それと同じ力をわしらみたいな魔法力が弱い人間でも使えるように、魔法の力を使わずに、しかし魔法と同等の力が秘められたアイテムの研究に励んでおるのじゃよ。」

 

「え!?魔法研究所なのに、魔法が使えないんですか?だから第一エリアなのか。」

光のジェミニは半笑いでつぶやきました。

 

「なんじゃと!?お前さんも第一エリアレベルじゃろうが!馬鹿にしおって。おい、このボタンを押してみろ。」

ネコイチから棒のようなものを渡されたジェミニは、小さなボタンを押してみました。

 

カチッ、ボオッ!!!

 

「わわ!!火が出た!!すごい!魔法みたいだ!」

「わっはっは、すごいじゃろ?」

ネコイチは得意げに言いました。

 

「お前さんはメリーベルの知り合いなんじゃろ?じゃったら、これをプレゼントしてやろう。」

「この瓶、は……?」

「火炎瓶じゃ!ここにさっきの棒で火をつけて相手に投げつけると瞬く間に炎に包まれる!強力な火炎魔法に匹敵するぞい!ムカつくやつがおったらこいつを投げつけてやればいい、わっはっはっ!」

「いや、物騒すぎますから!!!」

驚き慌てる様子のジェミニをよそに、ネコイチは大笑いしています。

 

そこでジェミニはネコイチからのいくつかのプレゼントをもらったあと、研究所を後にしました。

「いやあ、変わってる人だったけど、面白いものをたくさんもらえたな。あれ、もう日が暮れてる。そろそろジェミニと合流したいけど、どこにいるかな。」

 

光のジェミニが歩いていると闇のジェミニと出くわしました。

「あ、お帰り!いろいろ面白いものがあったよ。魔法研究所でいろいろともらえたし、あ、これ見て!キャンディロップっていうスイーツショップで買ったお菓子だよ。すごく美味しそうでしょ?今日一緒に食べよう。それとね……」

 

そう言いかけた光のジェミニの言葉をさえぎって、闇のジェミニは真剣な面持ちでこう言いました。

「おい、夜中になったら第4エリアに行くぞ!」

「え、でも僕は第1エリアしか行けないんだろ?どうやって…。」

「大丈夫だ、この腕輪を身に着けておけ。魔力チェックに引っかからなくなるアイテムだ。人間はどんなやつでも、たとえ魔法が使えなくても微力な魔力は持っているものだ。だからこの国はその魔力を感知してエリア間の移動を制限させているんだ。だがその腕輪をつけると魔力がゼロになる。だからそもそも感知自体されないからエリア間も移動できるっていうからくりだ。」

「なるほど!」

 

そして真夜中になると、人目を避けるように2人は第4エリアに入り、ある家を訪れました。

 

「ポニーさん、連れて来たぜ。さあ、話の続きを始めよう。」

「お前が剣士のジェミニか。なるほど、本当にそっくりだな。サイオウが見たらビックリしただろう。」

「この人は?」

「ポニーさんだ。この国の大魔道士であり、サイオウの古い友人だ。俺に魔法を教えてくれた1人でもある。」

「へ~、君が“さん”づけするなんてね。あ、こんばんは。テラス村のジェミニです。」

 

「それでポニーさん、一体何が起きてるってんだい?」

「ああ。単刀直入にいうぞ。最近国の政権幹部が大きく入れ替わったのは知っているな?新しく加わった連中のほとんど、あいつらは魔物だ。」

「なんだって!!!??」

「とても高度な魔法だ。人間の姿に化けて、人間と同じように行動する。知性だってある。そしてあいつらはこの国を滅ぼそうとしている。」

「そんな馬鹿な。この国は結界に守られていて魔物は近づけないはず。」

「結界は外側だけだからな。それも魔法の力で突破して、内部に入り込んだんだろう。私の魔法であいつらの話を盗聴した限りだと、近々魔物に此処を襲わせるつもりらしい。そのタイミングで内側から結界を解除することを画策しているみたいだ。」

 

「お、王様は?まさか王様も魔物なのかい?」

「いや、国王は人間だ。かつての大魔道士だが、いまはもう老いぼれたただのじじいだ。役には立たないし、今の魔力も大したことない。だが、それがかえって化けた魔物たちからすれば好都合らしい。国王は今や魔力も権力も、幹部たちよりも実際には劣っているんだからな。まったくうまく使われたもんだ、あの馬鹿。」

 

「なんてことだ、あ、でもここには魔力が強い人たちがたくさんいるんでしょ?みんなで協力すれば倒せるんじゃないかい?」

「確かにそうだが、それでも魔物のほうが一枚上手だろうな。そもそも魔物は人が持つ魔力と人の怨念が混ざり合って生まれてくる。だから、魔法が発展すれば、より強い魔力を持った魔物が生まれてくる。魔物も進化しているわけだ。魔法だって進化しているが、それに合わせて進化の連鎖が起こる。この結界だって、いつしかそれを打ち破る魔法が生まれる。

それに魔法はあくまでも道具であって手段だ。魔法が発展してもそれを使う人の心が追いついていかなければ、その魔法の力を使いこなせないし、逆に発展した魔法やそこから生まれた魔物たちに追い込まれてしまう。魔力の強さにあぐらをかいて、鍛錬をしてこなかったこの国の民たちなんて、いまの進化した魔物に歯が立たないだろうな。

いくら魔力が強くても、それをどう使って戦況を優位に進めるのか、どうやって人を守るのか、相手を倒すのか、そういったスタンスや経験が磨かれていないと、戦いには勝てない。そういう意味では今のこの軟弱なセインティティアを潰すなんてわけないはずだ。」

 

「大変だ、はやく阻止しないと!国の幹部が魔物だなんて民は僕たちのいうことなんて聞いてくれないよね、きっと。」

「そうだな。この国は魔法の力がすべてだからな。おそらく魔物が攻めてきたときに幹部の魔物も姿を現わすはずだから、そこを叩くしかないだろうな。ポニーさん、いつ頃攻めてくるか分かるかい?」

 

「ああ。おそらく24時間以内には。」

「24時間!?」

 

「問題は外の魔物よりも国に入り込んだ幹部の魔物たちだ。あの姿である以上、この国の民たちはやつらとまっすぐに戦うことはできないだろうな。第4エリア、第5エリアの強い魔道士たちでも一網打尽にされてしまう可能性がある。

だから悪いが、あいつらはお前たちに任せたい。外からの魔物は私がなんとかする。エルボスを救った英雄たち。頼む、このセインティティアにも力を貸してくれ。」

 

「ああ、任せてくれ。あいつの故郷を好きなようにはさせない!」

「うん、僕たちに任せて、ポニーさん!幹部の魔物に集中してると思うから、外の魔物はお願いね。」

 

緊急事態であることを知った2人はできる限りの戦闘準備を整えました。

 

 

そして翌日の夜中。

住民たちが異変に気が付きます。

 

「おい、なんだか街の様子がいつもと違くないか?」

「え……?結界がなくなってる!!!!」

「ほ、本当だ!大変だ早く結界をはらないと、魔物が入ってきてしまう!!」

「ああ、早く政権幹部に報告しないとだな……ん?なんだあれは……」

「おい……見てみろ……魔物の大群だ!!!!!!!!!」

「うわああああ!!!!」

 

国の結界が解除されてすぐに魔物の大群が街の中に流れ込んできました。

あっという間に第1エリアから第3エリアまでが魔物たちで溢れかえっています。

 

「逃げろ!!!すごい数の魔物だ!!!」

「はやく幹部に報告するんだ!!!」

 

慌て逃げ惑う民衆たちで国中がパニック状態です。

 

「落ち着け、お前たち!」

そこに強烈な竜巻と稲妻がおこり、あたりの魔物たちを蹴散らしました。

 

「ポニー様!!!!」

「大丈夫だ、みんなで力を合わせれば倒せない魔物じゃない。平和ボケした頭を叩き起こして、しっかり戦うんだ!」

 

他の場所では大きな火炎が魔物たちを焼きつくしていきます。

「ポニー、あんたの魔法を久しぶりに見たけど、さび付いてなさそうで安心したよ。てっきり優雅な暮らしでそよ風しか起こせないかと思ってたよ。」

「メリーベル!お前の火炎も相変わらず迷惑だな。熱くて無駄に汗をかいてしまう。」

 

2人の魔道士の活躍で民の士気が上がります。

 

「これじゃキリがないな。数が多すぎる。メリーベル!ここはお前に任せるぞ。私は第1エリアに行ってくるから。」

「ああ、任せておきな!なんとしても、ここは死守してみせるよ!」

 

ポニーが駆けつけた第1エリアでは強力な魔物に対抗できず、すでに大きな被害が出ていました。

「困ったな、あっという間に死傷者が出ている。残念だが、全員を助けている暇はない。なかなか厳しい状況だ。」

 

 

一方第5エリア。

 

「フッフッフッフ、いいぞ、無駄な抵抗など無意味だと分からせてやるぞ。あと数時間でこの国も落ちる。」

「簡単だったな。人間を化かすことも、操ることも。この国は魔法に依存しすぎだからな、実に脆い。」

 

「幹部の皆様!!!魔物の大群です!!すでに国中に溢れかえっています!!!どうか一刻も早く退治を!!」

 

「おお、それは大変だな、第5エリアの魔道士たちよ。心配しなくていい、われわれ幹部が今すぐに皆殺しにしてやろう。貴様ら人間をな!!!!」

 

「ぐわあああああ」

報告に来た魔道士の1人はあっという間に強力な魔法でやられてしまいました。

一緒にいた魔道士たちはあまりの突然の光景に驚き、恐れおののいています。

 

「いたよ、あいつらだ!!!!」

「ああ、間違いない。ポニーさんに教えてもらった顔と同じだ。1、2、3……7。ご丁寧に、全員揃っていやがるぜ。話が早くて助かる。」

 

「ん?なんだ貴様らは。余所者か?失せろ。ここは貴様らのような弱者が来て良いところではない。」

 

「おい、見ろ!魔道士がすでにもうやられてやがる。」

「なんてことを!!!人間の姿をしてるけど、本当に魔物みたいだね。良かったよ、これで容赦なく君たちを倒せる!」

 

「ほお、我々の真の姿を知っているというのか?なるほど。では余所者、貴様らは我々が直々に消してやろう。」

 

「いくぞ、ジェミニ!」

「うん、必ず勝つよ!!」

 

 

一方第1エリア。

魔法力が弱い人たちが集まるエリアでしたが、一方で数少ない剣術に長けた住民や旅人、そして不思議な道具を使う集団の活躍により魔物の攻勢にも力強く抗っていました。

 

「今こそ魔法研究所の成果を見せるときじゃ!!!魔法よりも怖い、ネコイチ様の特大火炎攻撃を食らわせてやるわい!!!」

 

ネコイチが大きな火炎瓶を魔物に投げつけると、辺り一帯に火柱があがり多くの魔物を倒しました。

「わっはっはっは!!!!見たか、魔物ども!!!!これが第1エリアの力じゃ!!!!」

ネコイチは手を腰にあて得意げに叫びました。

 

「所長!!!!!」

「はっはっは、お前たち!こんな魔物どもに臆せず、このネコイチに続くのじゃ!!」

 

「所長!!!!!今の火炎瓶で研究所に火が回ってます!!!!!」

「なんじゃとーーー!!!!早く言わぬか、バカ者!!!水じゃ!早く水爆弾を投げ込むのじゃ!!」

 

 

そして第1エリアの別の場所でも魔物と善戦する剣士がいました。

 

「でやあ!!よし、倒した!次はあっちを助けに行こう!」

「ん?そこの若い双剣の剣士、お前強いな。」

「あなたは、さっきから魔物を次々倒してるとんでもなく強い魔道士さん!僕はシータ。オコガマ・シータです。旅の途中でここに寄ったのですが、まさかこんな状況に遭遇するなんて。でも、あなたがいて心強いです!此処ではこれ以上被害は出させない!」

「頼もしいじゃないか、シータ。だが、悪いがお前は第5エリアに向かってくれないか?そこで私の友人たちが悪の親玉たちと戦っているんだ。きっと困っているはずだからな。こういう姿で、ジェミニという名前だ。私はポニー。彼らに私の名前を言えばきっと分かってくれるはずだ。」

 

ポニーは魔法でジェミニたちの姿を見せました。

 

「え、あのエルボスの英雄のジェミニさんたちが来てるんですか!?分かりました!ではここはポニーさんにお任せします。これも何かのめぐり合わせ。その悪の親玉とやらを僕も倒してきます!」

そう言うと、若い剣士はあっという間に走り去っていきました。

 

第5エリアでは、魔物の姿に戻った幹部たちと2人のジェミニが激しい戦いを繰り広げています。他の魔道士たちは魔物の姿の幹部たちに戸惑いその場で動けずにいます。

「よし、あと5匹!!!」

「なんだ、こいつの馬鹿みたいに強力な剣は。こちらの魔法を切り裂いて剣撃を当ててくるとは。こんな奴がこの国にいたとは。」

 

「いっ、いったい、何が起こっているんだ......!幹部様たちが魔物になっているが、本物の幹部様はどこに??」

「いや、もしかしてだが……これは幹部様たちが魔物だったってことじゃないのか?」

 

戸惑う魔道士たちに闇のジェミニが強く言葉を放ちます。

「おい!何をやっているお前ら!!あいつらは魔物だろ!戦え!!!」

「い、いや、しかし……幹部様は私たちよりも上の階級だし……」

「目を覚ませ馬鹿野郎ども!!!貴様らは人と魔物の区別もつかねえのか!?いま目の前に魔物がいて、国は魔物の軍勢に襲われていて、危機的状況なんだぞ!仲間の命と魔法とどっちが大事だと思ってるんだ!!その魔力は飾りか大馬鹿野郎ども!!!」

闇のジェミニは叫びながらあたりの魔道士たちを杖で何度もぶん殴りましたが、魔道士たちは身動きがとれずその場にへ垂れ込んでいるだけでした。

 

「だめだこいつら。もう知るか。それよりもおい、ジェミニ。さっきから妙だと思ってたんだが……この魔物ども、こっちの魔法がほとんど効いていない。どういうことだ……」

「フッフッフ、残念だが、お前たちの魔法は効かない。私たちがまとっているのはどんな魔法も無効化してしまう最高峰の防御魔法だ。魔法は常に進化しているのだよ。魔法を無効化する魔法をここの平和ボケ魔道士どもには破れんだろうな。お前の魔法も同じだ。」

 

「残念だが、あいつのいう通り、俺の魔法はあいつらに通じない。いまはお前の剣だけが頼りだ。俺は防御魔法に集中するから、あいつらへの攻撃は任せたぜ!」

「ああ、任せてくれ相棒!僕の剣で君の大切な国を守ってみせるよ!」

 

ジェミニの光と闇を帯びた鋭い剣が魔物たちに浴びせられます。

 

「こざかしい!!こちらの物理防御魔法をも貫いてくるとは、この馬鹿力め。燃えろ!!!」

魔物の魔法が光のジェミニを襲いますが、闇のジェミニの魔法ではじき返します。

 

魔物も光のジェミニの剣を魔法で回避しながら、こちらに攻撃をしかけてきます。

激しい攻防が続き、5匹の魔物の力に2人のジェミニはじりじりと押されていきます。

「くっそ、持久戦じゃ分が悪いか。」

 

「とりゃああ!!!」

そこへ素早く飛び込んできた影の剣撃が1匹の魔物をとらえ、倒しました。

 

「えっ!?君は?」

「はじめましてジェミニさん!!お会いできて光栄です!僕はシータ。ポニーさんに頼まれて助太刀に来ました!僕も戦います!」

「助かるぜ、ポニーさん」

「シータ君、君すごいね!あっという間に倒しちゃったよ。これで3対4。一気に形勢逆転だね!」

 

さらに激しい攻防が続きます。

 

「はあ、はあ、さすがに2人を魔法で防御しながら戦うのは骨が折れるぜ。しかもあの双剣野郎、動きが速くてカバーしきれねえ。……っ!?し、しまっ、うわあああ!!!!」

魔物に隙をつかれてしまい、闇のジェミニは吹き飛ばされてしまいました。

 

「フフフ、いまだ!燃えろ!!!」

 

魔物の炎の魔法が光のジェミニをかすめました。

 

「危なかった。吹き飛ばされたジェミニも心配だけど、彼ならきっと立て直してくるはずだ。」

「ジェ、ジェミニさん、何か燃えてますよ!」

「え?わあっ!!!危ない、さっきの炎の魔法攻撃で火炎瓶に火がついちゃったよ!!!わわわわわわ!!!」

 

光のジェミニは慌てて火炎瓶を放り投げました。

その火炎瓶は魔物に直撃し、魔物は激しい炎に包まれました。

「ぎゃああああああ」

「え、そうか!これは魔法じゃないから、魔物たちにも効くんだ!!!」

 

炎に包まれた魔物に剣を振り下ろし魔物を倒した光のジェミニは、そのまま流れるようにネコイチからもらった爆薬にも火をつけ、魔物に投げつけました。

「それいくぞ!これが僕の魔法だよ!!」

 

ドカーーーーーーーン!!!!!!!!!!!

 

爆薬は大気が震えるほどの凄まじい大爆発を起こし魔物を吹き飛ばしてしまい、光のジェミニとシータもその風圧で飛ばされてしまいました。

 

「びっくりしたああぁぁぁ!!!と、とんでもない威力だ……。うっかり火がついてたら大変なことになっていたよ!!!」

 

「ば、ばかな……なんだこれは……!魔法は効かないはずだが……」

 

瀕死の魔物たちへ光のジェミニとシータはすぐに攻撃をしかけ、残りの魔物たちをすべて倒してしまいました。

 

「へっ、魔法に依存しすぎてたのはてめえらだろ、ばーか。人間の力を思い知ったか。」

「あ、ジェミニ!ずいぶん飛ばされちゃってたけど大丈夫だったかい?」

「ああ、正直ひやっとしたよ。」

「お二人とも無事でよかった!噂に違わぬ見事な戦いぶりでした!」

「いやいや、シータ君、君が来てくれなかったらきっともっと苦戦してたと思う。ありがとう。さあ、他のエリアの魔物も退治してしまおう!」

 

それからしばらくの時間戦闘が続いた後、セインティティアになだれ込んできた魔物たちも、各人の活躍によりすべて退治してしまいました。

 

国の被害は大きく、多くの死傷者が出て、建物の損壊も激しいものでした。

そして国の政権を魔物が握っていたという事実は瞬く間に国中に広がり、世界にも衝撃を与えました。

 

戦いの傷跡がまだ残る中、国を救った英雄たちは国王を交え、今回の出来事について話し合い、これからの国づくりについて議論をしました。

 

 

そして数日後、2人のジェミニはヒスイの森に戻ってきました。

再び焚火を囲んでメリーベルとポニー、そしてシャルムも含めて食事をしています。

 

「あたしは先に城を出ちまったけど、城は復興に向けて動けそうだったかい?」

メリーベルが訊ねました。

「うん、あの後、実は花の魔女ナインが城に現れたんだよ!亡くなった人たちにたくさんのお花を手向けてくれて、国の中で特に損壊が激しかった場所にもお花で彩ってくれたんだよ。それはもう見事だったよ。そこの住人達も喜んでてね。間違いなく復興に向けての心の安らぎと希望になったんじゃないかな。」

 

光のジェミニは説明をした後、話を続けました。

 

「今回はたくさんの被害を出してしまって、力不足を感じるよ。僕はまだまだだな。」

「そんなことはない。お前たちは本当によくやってくれた。お前たちがいなかったら、この国に入り込んだあの魔物の魔法は破れなかったかもしれない。」

「ああ、ポニーさんの言う通りだ。今回はお前の剣頼りだったからな。」

 

「ありがとう!でもあのシータっていう子にも感謝しないとだね。彼はすごく強かったし、助けられたよ。」

「どうやらあの子はセインティティアの要職に就くそうだ。国も今回の一件で、魔法に依存した国づくりに危機感を覚えたらしく、これから剣士の育成にも力を入れるみたいだな。国王も復興の目途が経ったら退任するらしい。ここからどう変わっていくのか、見守ってやろう。間違いなく、セインティティアにとっては国の歴史上大きな分岐点だからな。」

 

「見守るって、あんたがいっそ国王になったらどうなんだい、ポニー?あの国で一番の魔道士はあんただろ。」

「やめてくれ、メリーベル。私はそういうのに一切興味がないことは知ってるだろ?というか、そもそも魔法にだって興味がないんだ。昔サイオウも言っていたが、魔法なんて本当はつまらないものなんだ。なんでも実現できてしまうからな。人の手で工夫して時間をかけて形作っていくことこそが、面白いし知恵や経験にもなっていく。

魔法は確かに便利だが、魔法の発展は人類の発展とは違うと私は思っている。暮らしが便利なことと、暮らしが豊かなことは違う。魔法で便利になりすぎてしまうと、大切なことに目を向けられなくなる。そして気づいたときには私たちは大切なものを失くしてしまっているだろうな。

魔法で作る料理より、お前がこうやって手間暇かけて作ってくれた料理のほうが圧倒的に美味しいのと同じことだ。」

 

「あっはっはっは、大魔道士様にほめてもらえて光栄だ。そりゃもちろん、あたしも魔法を使えばすぐに料理ができちまうよ。手作りの料理は確かに手間がかかるけど、これは不便なんかじゃない。面白さがあるってことだ。そしてだからこそ、愛とまごころっていうスパイスをかけられるのさ。」

 

メリーベルの美味しい食事をお腹いっぱい食べ、4人は夜中まで語らいました。

 

「さて、そろそろ眠くなってきたし、お開きにしよう。そうだジェミニ、お前サイオウの笛をまだ持っているか?帰る前に久しぶりにあの音色を聞かせてくれ。せっかくだから、あの世のあいつにも届くように。」

 

ポニーに促され、闇のジェミニは笛を吹き始めました。

 

静かな森に優しい笛の音が響きわたり、4人はその音色に耳を傾けました。

その音色は優しくも、少し楽しそうな響きです。

闇のジェミニが笛を吹き終えると、4人の間を穏やかな風が吹き抜けました。

 

まるでその演奏を誰かが称えてくれているかのように。

 

 

~勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記 完~

 

 

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オススメ作品

ドライアドの杖

旧世界旅行記 11 ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ୨୧ 「出発して早々は何も起こらんだろうから、交易品のこととか、いろいろ話を聞かせてやろう。お前さんは魔術師と言ったね?ならば杖の類は馴染みが深かろう。うちじゃ杖は人気の品だが、これから向かう砂漠の国では、【精霊竜の杖】が有名でねえ…あたしらも買いつけて帰ってくるが、1本でそいつの10本分にも、20本文にもなるのがこの【ドライアドの杖】さ。なんでだかわかるかい?…ああ、その通り。砂漠の国はどでかい砂漠の真ん中の、たまたま芽吹きのあったオアシスにつくられた国だから、緑が少なくて精霊ドライアドの加護がないと植物が育ちにくいのさ。だが、ドライアドは深き森に住まい生まれる精霊…こうして魔石に宿らせ休眠させながら移動させてやらなければ、砂漠の国に渡るまでに枯れて死んでしまう。魔石はそれぞれ魔力で満たされ、装飾の部分には、精霊が心地よく杖にとどまっていられるよう工夫がされているのさ。砂漠の国に渡ってからも安心はできないよ。むやみに使えば精霊は簡単に枯れてしまうからね。だから時々マナをたっぷり含んで湧く泉に杖を持って行き、精霊を放して遊ばせてやるのがいいんだ。精霊に魔力が満ちれば、精霊たちが枯れるのを遅らせ、長い間加護を得ることができるからね。」 ーーーーー砂漠の国への旅路にて、商隊の薬師の話。 ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ୨୧ 金属製の簪軸をベースにし、レジン製の結晶とメタルパーツ、ビジューなどを用いて魔法の杖風簪を仕立てました。 ドールのお持たせやインテリアとしてお使いいただける他、簪として身につけていただくことも可能です。

アクセサリー

手芸店 はぐるまや

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