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Real Fantasy物語 ~勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記~ -クリスタリア篇-

 2025-08-09

元になるお話はこちらから「勇者ジェミニの伝説

前回のお話はこちらから「勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記 -断崖絶壁 魂の対話編ー

 

 

 

断崖絶壁を無事に越えた2人のジェミニは、雪山のふもとの町、クリスタリアへと向かいました。

 

クリスタリアは、精霊信仰の強い町で、いまでもクリスタルの伝説が残っています。

その昔、この世界を想像した創世の神が、世界の均衡を守るために神の持つ力をクリスタルに変え、この地におさめたといわれています。また、そのクリスタルを守るため多くの精霊がこの地に存在しているといわれています。

クリスタリアはエルボス帝国領の町であり、いたるところに重厚な鎧を身にまとった兵士が見られます。

 

「そういえば、クリスタリアってクリスタルの伝説が残る町だろ?ここにクリスタルがあるってことじゃないのかな……。でも、あのアレーシャの森の魔女は雪山にあるって言ってたよね。どういうことなんだろう。」

「それは町で調べてみりゃあ分かることだ。」

 

そんな言葉を交わしながらクリスタリアの町に到着した2人のジェミニは町の中を進んでいきました。町はちょうど祭祀の真っ最中。町中が白を基調とした装飾で飾られており静かで厳かな雰囲気に包まれています。

それとは対照的に町に点在するエルボス兵の汚れた鉛色の鎧がとても目立っています。

 

「なんだか、ここの町の雰囲気は異様だね。」

「ああ。信仰心が強いくせに武力で支配しているようにも見える。俺の嫌いな嘘と欺瞞の臭いがぷんぷんするぜ。」

 

2人がしばらく歩いていると、道の真ん中を馬車の列が通っていきました。

 

「祭祀祭祀で、うんざりだな。雪山から流れる水から作った銘酒プルミエラムールだけが楽しみみたいなもんだ。」

10台ほどの馬車の最後尾を豪奢な鎧を身に着け運ばれる要人が、目の前を通る際に放った声が2人の耳に入ってきました。

 

「あれってエルボス帝国の兵士のお偉いさんかな。うーん、あんまりご機嫌な日常じゃないみたいだね。」

「あんなやつらは放っておいて、祭祀の中心に行ってみよう。そこの一番偉いやつにクリスタルのことを聞いてみるんだ。」

 

2人は祭祀の中心に足を運び、その一番高いところにいる年老いた人物の顔を確認しました。

 

「あいつがボスだろうな。直接聞いてみよう。」

 

祭祀が一区切りすると、その人物のもとに2人は向かいました。

そしてその年老いた司祭に近寄り、光のジェミニが声をかけた瞬間に腕をつかまれました。

 

「なんだ貴様らは!怪しいやつらだな!」

 

2人は重厚な鎧を身に着けた兵士に足止めをされてしまいました。

 

「違う、僕たちは怪しいものじゃない!ただこの人にクリスタルのことを聞こうと思っただけだ!」

「なんだと!?もしや、反クリスタル派の連中だな?こっちにこい!俺がこぶしでたっぷり教えてやるぜ!」

「うわぁ!やめろ!」

 

光のジェミニが連れていかれそうになったところに突然竜巻が起こり、その兵士は吹き飛ばされてしまいました。

 

「話のわからねえうすぎたねぇ野郎が……!」

 

それは闇のジェミニの魔法でした。

 

「じーさん、クリスタルについて何か知らねえか?」

そう言い終わらないうちに、あっという間に多くの兵士が集まってきました。

 

「うわ、たくさん集まってきたよ!ひとまず逃げよう、ジェミニ!」

光のジェミニはそう言うと、追撃の魔法を放とうとする闇のジェミニをさえぎって手を引っ張って走り出しました。

 

あっという間に町の外れまで走り抜けた2人は兵士たちの追手からなんとか逃れることができました。

 

「まずいな、この町にはこのままいられなさそうだ……」

「どうしよう、このまま雪山に向かうかい?」

「いや、少し装備を整えたいな。食料とアイテムを買ったら早々に離れよう。しかしおかしなこと言ってたな……反クリスタル派、か。」

 

数日町の外で野宿をした2人は、日が暮れた後、町に再び戻りこそこそと買い物を始めました。

 

「ねえ、今日はちゃんとした宿屋に泊まろうよ。僕もう虫に刺されるの嫌なんだよ。それにたまにはまともなご飯を食べたいよ。」

「お前は本当に軟弱だなあ……。それでつかまっちまったら元も子もないだろ。でも確かに、ここの伝説の銘酒、プルミエラムールは俺も気になるが。」

「神話の神様と恋に落ちた人間の伝説をもとに作られたっていうお酒でしょ。有名だよね。」

 

そう話す2人はぼんやり宿屋の灯りを眺めながらその場を通り過ぎました。

すると突然隣の酒場の扉が開き、数人の兵士が赤い顔をして出てきました!

 

「やべっ!!!!」

 

そこにはなんと、闇のジェミニが以前魔法で吹き飛ばした兵士がいました。

 

「あ!!!!お前はまさか……!」

「どうした?」

「隊長!こいつらです!以前報告しました、反クリスタル派の連中です!!」

「なんだって!!??」

 

2人は兵士に囲まれてしまいました。

「連れていけ!すぐにエルボス帝国に移送しろ!」

 

こうして、2人はエルボス帝国の牢屋にとらえられてしまいました。

 

「……いってぇ!ちくしょう、あの野郎乱暴に扱いやがって!」

「君は僕よりも2発多めに殴られてたもんね。たぶん見た目の差だろうね!君は見るからに怪しいから!」

「おい笑うなっ!お前が善人ぶってるから俺がそんな風に見えるんだろうが!!……はぁ、それより見たか?あの兵士たちの中に例の司祭のじーさんがいたのを。司祭が兵士とつるんで酒なんて飲むか普通?あいつら何か企んでるんじゃねぇのか?」

 

2人が牢屋に入れられて数日経ったころ、豪奢な鎧を身にまとった1人の兵士が数人の部下らしき人物を連れて2人の元を訪れました。

「お前は……あの時の偉そうな兵士。」

 

「おい、罪人ども。おまえらが盗んだクリスタルはどこだ?」

「はあ??」

「わかってるんだぞ、お前らが盗んでどこかに隠したことはもう大司祭から聞いているんだ。今なら刑を軽くしてやっても構わんぞ。さっさと隠し場所を白状しろ!」

「知らねえよ、そんなもん!」

「そもそも僕たちはクリスタルを盗んでなんていない!誤解だ!!」

「ふん、いいだろう。そんな態度をとるなら、そのままそこにいるといい。クリスタルの盗みなんて重罪だぞ?数日後の裁判で有罪になればお前たちの命の保証はないかもしれん。そうなる前に吐いたほうが懸命だと思うがな。」

「知らねぇって言ってるだろうが!!!」

 

兵士たちは2人をあざ笑い、見下すような眼をして去っていきました。

 

「畜生、あの野郎……それにあのじじい!!何の恨みがあったってんだ!……この国は相変わらずだな…………滅ぼしてやる……!」

「おいおい、物騒なこと言わないでくれよ!?」

「……俺が生まれ育ったリベルナの町も、この国の領地だった。……そして、俺の育ての親も、ここで濡れ衣を着せられて殺されたんだ!!!」

 

「え!?リベルナの出身だったのか。ということはここは故郷でもあり君の仇の地ってことか。」

「故郷じゃねぇよ!!こんな国、恨みしかない!!!」

 

一方、クリスタリアの町ではクリスタルが奪われてしまったという噂でもちきりでした。

 

その町から外れた森の付近。

1人の兵士が不気味な魔女と話をしています。

 

「反クリスタル派に奪われたクリスタルはどうやら西の湖に隠されているらしい。ただそこには霊獣がいてどうしても近づけないんだ。取り返すにはかなりの兵力が必要だろう。」

「なるほど、なかなかの情報じゃないか。ヒッヒッヒッ。いいだろう、金貨をくれてやる。

……よし、お前が率いる隊の兵士を連れてクリスタルを取り返してくるんだ。そうすれば大量の金貨をやろう。お前も国から称賛されガッポリ儲けられるだろうさ。その後で使いを寄こすから、クリスタルを渡すんだ。周りには悪い魔女に奪われた、とでも言っておけばいいさ。ヒッヒッヒッ!」

「よし!兵を整え、 翌々朝には霊獣討伐とクリスタルの奪還に向かおう!」

「おっとその前に。この話は他の兵にするんじゃないよ。お前さんの手柄を他の兵たちに奪われちまうからね。国王にも言うんじゃない。もちろん、ワシのこともだ。もし他に漏らすようなことがあったら、お前が悪い魔女と繋がっていることをバラすからね。ヒッヒッヒッ。」

「わかっている!大丈夫だ!」

 

そう話し終わると兵士はこそこそと町へ帰っていきました。

 

「ヒッヒッヒッ。これはチャンスだねぇ……。ワシと繋がっている兵士たちに個別に話を持ち掛け、湖に集結させる。そこで全員で霊獣討伐をさせれば、クリスタルが確実に手に入る。そしてその間に手薄になった帝国に奇襲をかければ、国も潰せるじゃないか。ヒッヒッヒッ。」

 

それから2日後の早朝、不気味な魔女から個別に話を聞いたエルボス軍の第1兵隊、第3兵隊、第4兵隊、第6兵隊は、自分の隊だけの手柄にしてやろうと企み、各々は他の隊の兵たちには内緒で霊獣討伐のため西の湖に出かけていきました。

 

しかし湖でばったり他の隊と顔を合わせた兵士たちは驚きました!

「なぜお前たちがここにいるんだ?」

「お前たちこそ!!」

「俺たちは魔物が暴れていると聞いて討伐にきたんだ。」

「なに!?どうしてそれを!?それは第3兵隊だけの秘密任務と聞いていたんだが……。いや、いずれにしても手柄は我々第3兵隊のものだ!」

 

不気味な魔女の情報によって湖にはエルボス軍の10の隊のうちの、実に4つの隊が集まっていました。

 

「さあ、クリスタル……いや、霊獣…………いやいや、魔物はどこだ!!??この第1兵隊が見事退治してくれよう!!」

 

第1兵隊の隊長がそう叫ぶと、突然湖が輝きだしました。

そして徐々に湖の水が溢れ出してあたりに広がると沼へと変わり、兵士たちは全員足をとられてしまいました。

「うわぁっ、なんだこれは!身動きがとれない……!」

「どういうことだ!!」

 

すると、どこからともなく、虹色に輝く尾をした大きな鳥が飛んできました。

「あれは……霊獣だ!!!」

 

その霊獣は口から炎を吐くと、その沼の周りを火の海で囲んでしまいました。

 

「まったく、情けない……つまりここにいる兵士たちは、全員魔女と繋がっておったということじゃな。」

なんと、そこに現れたのはクリスタリアの大司祭と第2、第5、第7兵士隊の兵士たち。

 

「大司祭!!それと……貴様ら!!どうしてこんなことを!!」

「それはこっちのセリフじゃ、祖国を裏切った愚か者どもめ!魔王の手先の魔女と取引なんぞしおって!反クリスタル派のリーダーはわしじゃ!そこでゆっくり反省せい!」

 

なんと、これはすべて悪い魔女とつながった裏切り者の兵士たちをおびき寄せるための、大司祭の作戦だったのです。

 

「おのれ、罠だったか!!すぐに逃げるよ!!」

 

その様子を陰から見ていた不気味な魔女はそうつぶやくと逃げ出そうとしましたが、体が動きません。

「残念じゃったな、そこはもうわしの魔法陣の中じゃよ。さあ、エルボスの誇り高き兵士たちよ、この魔王の手先の魔女と卑劣で裏切り者の兵士たちをとらえるのじゃ!」

 

こうして、不気味な魔女と兵士たちは一網打尽にされてしまいました。

 

しかし一方そのころ、エルボス帝国では兵士たちの留守を狙った魔王の軍勢が攻め込もうとしていました。

 

「何やら騒がしいな」

「城で何かが起きてるみたいだ」

 

城の異変に気づいたジェミニたちのもとに、数人の兵士と司祭が足早に近づいてきました。

「ジェミニ様、申し訳ございませんでした。」

そう言いながら牢屋のカギを開け2人を解放しました。

 

「お二人には本当に申し訳ないのですが、これはすべてクリスタリアの大司祭と我が国の王による、魔王に寝返った兵をとらえるための芝居だったのです。そこにお二人を巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。国王からもあらためて謝罪をしたいという申し出がございます。」

 

「なんだって!!??」

「なんだって!?」

 

「しかし、今はそんなことを言っている場合ではありません。魔物の軍勢がこの国のすぐそこまで迫っているのです!我が国の兵士たちは魔王の手先の悪い魔女に騙されてしまい、いま国には3割ほどの兵しか残っておりません。お二人は早く逃げてください!!」

 

「なんだかとんでもないことになってるね!頭が混乱しそうだよ!」

「まんまと利用されて、しかも魔物に襲われそうになっているだと?ふんっ、いい気味だな。滅びればいいさ、こんな国。さっさと出ようぜ。」

 

2人が城の外に出ると、兵士や住民のあわただしい声が聞こえてきました。

 

「もう東門まで来ているらしいぞ!」

「いやだ、死にたくないよ!!!!」

「第9兵隊は城の中心を固めるんだ!」

「よし、第10兵隊は東門で食い止めるぞ!!」

 

慌てる人たちを横目に闇のジェミニは落ち着いた声で言いました。

「これが人を欺き、罪のない人に濡れ衣をきせ、弱い人たちを苦しめた哀れな国の末路だ。せいぜい苦しんで滅びろよ。さあ、西から出ようぜ。」

 

「待ってくれ!ジェミニ!」

 

「……おいおい……今回ばかりは俺はお前の能天気に付き合う気はないぞ。」

 

「分かってる……分かってるけど……大切な人を奪われた国を守ろうだなんて、とてもじゃないけど君には言えない……だけど……それでも、ここに住んでる多くの人はその件とは無関係なはずだろ。この戦いで、君のように大切な人の命を奪われる人が増えてしまうなんて、僕はやっぱり見過ごすことができないよ。」

 

「じゃあ勝手にするんだな。あばよ。」

 

そういうと、闇のジェミニは西門へ去っていきました。

その後姿を残念そうな面持ちで眺めていた光のジェミニは下を向き大きく息をつくと、東門を振り返りました。

「くっ、もう東門が突破されて敷地内に魔物が入ってしまっている!!!怖いけど……でも

僕がいかないと、何の罪もない人たちが殺されてしまう!急がないと!!!」

 

光のジェミニは急いで東門へ向かいました。

そこでは魔物たちがすでに城の中に入り込み、兵士たちとの戦闘が始まっていました。

 

光のジェミニはそこに駆けつけ剣を構えると、魔物たちに向かって聞こえるか聞こえないかわからないくらいの声で小さく叫びました。

「さ、さあ魔物たち!こ、この先には絶対に行かせない……からな!!こ、この光の剣を受けてみろ……!」

 

小さく控えめな声とは裏腹に、光のジェミニの剣は凄まじく、一振りすれば稲妻のように閃光が走り、バタバタと魔物をなぎ倒していきます。

 

「何者だ、あの戦士は!?とんでもない強さだ!」

「あの光の戦士に続け!!!!」

その場の兵士たちは驚き、そして士気をあげました!!

 

「はあ、はあ……キリがないな……。倒しても倒しても湧いて出てくるみたいだ……!でも僕は諦めない、目の前に守るべき人たちがいるんだ。ここで僕が負けたら終わりだ!」

 

魔物たちも負けてはいません。

遠くから魔法を飛ばして光のジェミニや兵士たちを攻撃する魔物もいれば、近づいて鋭い爪や剣を振り下ろしてくる魔物もいます。

ふと気がつくと、光のジェミニは魔物たちに囲まれていました。

 

「し、しまった!」

 

魔物たちの爪や魔法が一斉に光のジェミニを襲います。

 

しかしその瞬間、突然黒い霧が現れ、魔物の攻撃をはじき返しました。

そしてあたりの魔物を焼き尽くしてしまいました。

 

「貸し1だな。」

 

「ジェミニ!!!戻ってきてくれたのかい!?」

「ふんっ、ここで魔物の群れを倒しておいたほうが、魔王の戦力を大きく削れると思っただけだ!あとはお前に死なれたら俺の魂が完全にならないからな!」

 

そう言いながら闇のジェミニはゆっくりと光のジェミニの横に並びました。

 

「あんまり派手に暴れて無関係な人を巻き込まないでおくれよ。」

「お前こそ俺の足を引っ張るなよ。」

 

2人のジェミニは同時にニヤリと笑うと、魔物たち相手に大暴れ!

 

剣からほとばしる光が魔物たちを薙ぎ払い、杖から飛び出す炎や風が魔物たちを一掃していきます。

近くの魔物は光の剣で切り裂き、遠くの魔物は魔法で消し去る。

剣をはじきかえす魔物には魔法を放ち、魔法が効かない魔物には剣を振り下ろす。

2人のジェミニの見事な連携によって、現れる魔物たちはなすすべなくあっという間に消えていきます。

 

「異国の戦士たちに任せきりになるな!わが祖国を我々の手で守るのだ!このハロネストに続け!!!」

「よ、よし、隊長に遅れをとるな!!俺たちで守るんだ!!」

国に残る数少ない兵士たちは団結し、勇敢に魔物たちに挑みました。

 

激しい戦いが繰り広げられ、すべての魔物を倒し切った頃には日が暮れようとしていました。

 

「はあ、はあ、やった、これで全部倒したよね。」

「はあ、はあ、……ああ、お前、見かけによらずタフだな。」

 

「うおーーー!!!!!」

エルボスの兵たちは勝利に雄たけびをあげました!

 

半日以上の戦いが続いたにもかかわらず、住民の死者はなんと1人もいませんでした。

 

安堵の声と歓声が上がる中、2人のジェミニは美しく沈む夕日を眺め、互いにこぶしを突き合わせ、勝利を喜びました。

 

こうして圧倒的な強さで勝利を導いた2人のジェミニの名声は瞬く間に世界中へと広がることになりました。

 

翌日、国王の間に招かれた2人は、国王と大司祭から今回の事の真相を聞かされ謝罪と感謝の言葉を受け取りました。

 

ここ最近、自国の兵士と不気味な魔女が何やら取引をしているという噂が耳に入ったため、その魔女と繋がっている隊長、そしてその部下たちを捕まえる作戦を実行することにしたこと。

おとりの隊長を使って、クリスタルが奪われて湖の傍に隠されているという偽の情報を魔女にだけ流したこと。

実際にクリスタルが盗まれたという偽の情報に信憑性を持たせるために2人のジェミニに目を付けて、彼らが盗み出したということにしたこと。

偽の情報を知っている兵士は、魔女とつながっている隊であるということ。

そしてまんまとおびき寄せられた魔女と兵士たちを一気にとらえることができたこと。

 

2人は今回の経緯にいたるすべての真実を知らされました。

 

さらに光のジェミニは、過去に起きた闇のジェミニの育ての親が処刑された話をし、それについても国王は闇のジェミニに深々と頭を下げ謝罪をしました。

 

「今回このような事態になったことは間違いなく私の責任だ。君の育ての親のことも大変に気の毒だった。事の真相は残念ながら私も把握していないのだ。しかし私の父である亡き前国王が行ったこととはいえ、君の大切な人を助けられなかったことは事実だ。それもすべて前国王のすぐ近くにいたはずの私が弱き人間だからだ。真実が見えておらず、民の暮らしにも目を向けられていなかったからだろう。私が変わらなければ、我が国はいつかまた再びこのような事態に陥ってしまう。これからは私自身が、直接民衆のもとへ足を運ぼうと思う。

此度は2人に救われた。ジェミニと言ったな。君たちの旅が無事に終わることを祈ろう。そして君たちのために、エルボスは国をあげて力になろう。」

 

その国王の言葉に目をそらさず、最後まで聞いていた闇のジェミニはすぐに言葉を返しました。

「であれば、クリスタルがほしい。クリスタリアの村にあるんだろう?」

 

「ふむ……残念じゃが……もとからクリスタルなんて町にはないのじゃよ。何百年も前からな。残っているのは伝説だけなのじゃ。」

大司祭は躊躇いながらそう答えました。

 

「なんだって??」

 

「クリスタリアは精霊信仰とクリスタルの伝説で町が統治されておる。なのに本当はクリスタルがなかった、なんてことが公になると町が衰退してしまうじゃろ。そう考えた代々の大司祭たちがクリスタルは人目につかないように祀られているということにし、秘密にしておったのじゃよ。これは代々の大司祭たちと、この国の国王しか知らん。しかしそれも、人々をだましておったわけじゃからな。間接的に今回の件のように魔王の手先の魔女につけこまれた原因になったのかもしれんのぉ。」

 

「では、本当のクリスタルは一体どこに?」

 

「わしもはっきりとはわからんのじゃ。だが、言い伝えによると、雪山のどこかにクリスタルが眠っているということは、口伝にて聞いてはおる。」

 

「やっぱり雪山か。」

 

「お前たちはなぜクリスタルを求めるのじゃ?」

 

その問いに対し、2人は魔王を倒すために旅をしていること、魂が分かれてしまい、魔王を倒すために1つになることが必要なこと、そのためにもクリスタルの力が必要なことを話しました。

 

国王と大司祭は驚きながらも真剣な顔で2人の話を最後まで聞きました。

そして国王は何度か頷いた後、まっすぐとジェミニたちの方を向いて力強くこう切り出しました。

 

「君たちが魔王の戦いに挑むときは、その前に是非とも私に声をかけてほしい。エルボスは君たちと共にあると誓おう。」

 

その国王の力強い言葉を光のジェミニは真っすぐと笑顔で、闇のジェミニは表情を変えることなく少しうつむきながら聞き届けました。

 

2人は国王と大司祭に別れを告げるとクリスタリアの町へ戻りました。

そこで数日滞在し体を休めた2人は準備を整えると、いよいよ雪山へと出発することにしました。

 

「やっぱここの酒は最高だったな。さあ、いくか。」

 

宿を出たところで不意に2人は呼び止められました。

 

「お待ちなさいふたりとも。これから雪山に向かうそうだね。私はこの町の占い師だ。英雄の2人を占ってほしいと、大司祭から言われてね。実際に占ってみたんだが……少し気になることがあってな。」

 

「ありがとう、占い師さん!それで、気になることってなんだい?もしかして、天気がすごく悪いとかかい?」

「そりゃあ雪山に行くんだから、悪天候で雪は降ってるだろ。」

「なかなか愉快なやつらだな、お前たち。残念ながら私の占いは天気予報ではない。いいかい、心して聞くんだよ。」

 

気の抜けた2人とは対照的に真剣な表情で占い師は話を続けます。

 

「占いではこの先、『お前たち2人のうちどちらかが命を落とす』と出ている。」

 

「え!??」

その場に緊張感が走りました。

「雪山にはドラゴンが住んでいるという伝説もあるし、これまで多くの者が帰らぬ人となった場所でもある。くれぐれも気をつけていくんだよ。あくまでも占い。もちろん外れることもあるし、お前たちの行動次第で運命が変わることもある。どちらにしても2人の無事を心から願っているよ。」

 

2人のジェミニは急なことに呆然として、顔を見合わせました。

 

「あと、占いでは一番高い場所を目指せ、とも出ている。雪山の道は険しいものだ。この石を持っていきなさい。さあ、ターヤ。」

「はい、チャロ様。これはね、火の精霊の加護を受けた石でね、持ってると石の周辺がずーっとあたたかいんだよ。雪山は凍えるほど寒いからね。ドラゴンに出くわさないように回り道してたらずっと寒いでしょ?だからこれをあげるね。頑張ってね、お兄ちゃんたち。」

 

あたたかな精霊の石を受け取った2人はお礼を言い、不安な気持ちを抱えながらも雪山へと歩みを進めました。

 

さて、いよいよクリスタルが眠るという雪山へと向かった2人のジェミニ。

不吉な占いが頭をかすめる中、険しい雪山を頂上に向かい歩みを進めます。

果たして無事にクリスタルを手に入れることができるのでしょうか。

 

運命の雪山編へ続くーーー

(予告動画は8/16、本編のお話は8/23に公開予定です)

 

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