魔女の寿命は長い。
数百年、数千年と生きた魔女もいる。
そんな魔女にとって、絶えず流れていく世の中は、人も動物も景色も、すべては儚いものである。
移り行く景色の中で、まるで自分だけが時が止まったかのように感じられるのである。
それは魔女の心を少なからずすり減らすものであった。
そんな中で変わらない何かを求めた魔女にとって、思い出は貴重なものだ。
記憶は、その瞬間の出来事を永遠にすることができるからだ。
しかし残念ながらそれすらも、いつかは風化してしまう。
だから世界を旅し、様々な物語とめぐり合ってきた魔女は、自身が体験し目にしたその一瞬を切り取り、魔法の力により自分の装いに取り込んだ。
いつでもその思い出を風化させずに触れられるように。
美しい風景、躍動する幻獣たち、それらの物語を表すたくさんの品々……
その雰囲気や空気、においから懐かしさがこみあげてくる。楽しさがよみがえってくる。
途方もなく長く生きる魔女にとって、それは心の寄りどころでもあった。
ただ、そんな魔女には思い出を装いに取り込む上で、自身の中で2つのルールを設けていた。
1つは人の描写は残さないこと。
誰かとの思い出は、いつしか切なさや虚しさのほうが強くなるからだ。
同じ「人」という存在でありながら、人とは違うことによる寂しさに心が襲われてしまうからだ。
世の中には忘れてしまったほうが幸せなこともあると知ったからだ。
もう1つは風景をそのままの描写としては残さないことだ。
変わらないものなどないことを理解している魔女にとって、リアルすぎる景色や描写は寂しさを助長するものだからだ。
思い出は、少しぼやけた、遠いおとぎ話くらいの記憶のほうが心が平穏でいられると知ったからだ。
そのため魔女の装いに刻まれた風景はいつでも絵画や絵本のような絵柄や描写であった。
魔女は自身の装いからわずかに見える情景を時折広げては、目を細め物思いにふけるのであった。
その情景は楽しく、儚く、そして美しい一場面であり、それを眺める時間は魔女のお気に入りだった。
もちろん少ないながらも魔女にも多少の交友関係はある。しかしその多くは同じく長命な魔女とのものであった。
ある時、魔女仲間のナインが夜空を眺める魔女にこう問いかけた。
「この世は移ろうのに星空の景色は変わらないわね。」
その問いに対して、少し寂しそうに魔女はこう答えた。
「いや、あの星空の景色もこの世と同じように移ろうものだ。なぜなら、去年私たちとこの空を一緒に見たリセリアは、もういないのだから。私の目に映るこの星空の景色は、去年とは変わってしまったよ。」
そうして微かに微笑むと、グラスのワインをぐいっと飲み干した。
真っすぐに星空を見つめるその横顔はまるで、夜空の星が季節をこえて巡るようにこの世もまた巡ればいいのにと、そう願っているかのようだった。
そして魔女はまたゆっくりと自身の装いに視線を落とすと、優しく穏やかな顔でぼんやりと見つめた。
空には満点の星が輝く静寂に包まれたその時間は、まるで本当に時が止まったかのようだった。
数百年、数千年と生きた魔女もいる。
そんな魔女にとって、絶えず流れていく世の中は、人も動物も景色も、すべては儚いものである。
移り行く景色の中で、まるで自分だけが時が止まったかのように感じられるのである。
それは魔女の心を少なからずすり減らすものであった。
そんな中で変わらない何かを求めた魔女にとって、思い出は貴重なものだ。
記憶は、その瞬間の出来事を永遠にすることができるからだ。
しかし残念ながらそれすらも、いつかは風化してしまう。
だから世界を旅し、様々な物語とめぐり合ってきた魔女は、自身が体験し目にしたその一瞬を切り取り、魔法の力により自分の装いに取り込んだ。
いつでもその思い出を風化させずに触れられるように。
美しい風景、躍動する幻獣たち、それらの物語を表すたくさんの品々……
その雰囲気や空気、においから懐かしさがこみあげてくる。楽しさがよみがえってくる。
途方もなく長く生きる魔女にとって、それは心の寄りどころでもあった。
ただ、そんな魔女には思い出を装いに取り込む上で、自身の中で2つのルールを設けていた。
1つは人の描写は残さないこと。
誰かとの思い出は、いつしか切なさや虚しさのほうが強くなるからだ。
同じ「人」という存在でありながら、人とは違うことによる寂しさに心が襲われてしまうからだ。
世の中には忘れてしまったほうが幸せなこともあると知ったからだ。
もう1つは風景をそのままの描写としては残さないことだ。
変わらないものなどないことを理解している魔女にとって、リアルすぎる景色や描写は寂しさを助長するものだからだ。
思い出は、少しぼやけた、遠いおとぎ話くらいの記憶のほうが心が平穏でいられると知ったからだ。
そのため魔女の装いに刻まれた風景はいつでも絵画や絵本のような絵柄や描写であった。
魔女は自身の装いからわずかに見える情景を時折広げては、目を細め物思いにふけるのであった。
その情景は楽しく、儚く、そして美しい一場面であり、それを眺める時間は魔女のお気に入りだった。
もちろん少ないながらも魔女にも多少の交友関係はある。しかしその多くは同じく長命な魔女とのものであった。
ある時、魔女仲間のナインが夜空を眺める魔女にこう問いかけた。
「この世は移ろうのに星空の景色は変わらないわね。」
その問いに対して、少し寂しそうに魔女はこう答えた。
「いや、あの星空の景色もこの世と同じように移ろうものだ。なぜなら、去年私たちとこの空を一緒に見たリセリアは、もういないのだから。私の目に映るこの星空の景色は、去年とは変わってしまったよ。」
そうして微かに微笑むと、グラスのワインをぐいっと飲み干した。
真っすぐに星空を見つめるその横顔はまるで、夜空の星が季節をこえて巡るようにこの世もまた巡ればいいのにと、そう願っているかのようだった。
そして魔女はまたゆっくりと自身の装いに視線を落とすと、優しく穏やかな顔でぼんやりと見つめた。
空には満点の星が輝く静寂に包まれたその時間は、まるで本当に時が止まったかのようだった。
| 作品ID | n000008 |
|---|---|
| 作品名 | 星巡り |
| 読切り/連載 | 読切り |
| クリエイター | shop Real Fantasy クリエイターページへ |
| カテゴリ | その他 |
| 対象年齢 | 全年齢対象 |
| 紹介文 | 数百年、数千年と生きる孤独の魔女。 物語かのようなその記憶と思い出の欠片は、いつも魔女の心を、ほんの少しだけ穏やかにする。 ---------------- この物語はReal Fantasyオリジナルアイテム、「星巡りの旅装」にまつわるお話です。 実際のアイテムはshop Real Fantasyにて2026年9月に公開予定です。 |
| ハッシュタグ | 魔女 長命種 魔法 孤独 |