黎明暦700年
世界を旅をしているある旅人が、ある日地底に住むという種族の村を訪れました。
旅人はその村にしばらく滞在し、そこで多くの人たちと友好関係を築きました。
旅人はその村である表情の浮かない夫婦のことが気にかかり話しかけたところ、その夫婦はこのように答えました。
「私たちの息子は悪い魔女の呪いにかかり、それ以来重い病にかかったかのように寝込むようになったんです。医者にも見てもらいあらゆる薬を試したのですが、まったく効果がありませんでした。神にも祈りましたが何も変わりません。息子は日に日に弱っていき、今となっては歩くこともままならない状況です。はあ……弱っていくのをただ見ていることしかできなくて……息子のために何もできないことがとても苦しくてもどかしいのです。旅人さん、もし異国でこのような病状を治す手だてを見つけたら、是非教えていただけませんでしょうか。」
夫婦の話を熱心に聞いた旅人はその子供に会わせてもらうことにしました。
「こんにちは。私は偶然縁あってここを訪れた旅人だよ。気分はいかがかな?」
「こんにちは、旅人さん。僕はエルディオだよ。そうだね、気分は……あんまり良くないかな。もうずっとだけど。」
旅人と子供は少しの時間話をしました。
「そうか、君は空を見たことがないのか。」
「うん、生まれてからずっとここで暮らしているからね。ねえ旅人さん、空ってすごく綺麗なんでしょ?お父さんとお母さんから聞いたんだ。青い色をしていて、でも時間によってその色が赤やオレンジや紫に変わるんでしょ?すごいなあ、ああ……見て見たかったなあ……。」
子供は自分が知らない世界から訪れた旅人の話に興味深く耳を傾け、とても楽しい時間を過ごしました。地上に広がる空への憧れを耳にした旅人はどうにかその子供に空を見せてあげたいと思いましたが、その子供はもう歩ける状態ではなく、地上までの長旅に耐えられる体力も残っていませんでした。
そこで旅人はあることを思いつきます。
「空の絵を描いて見せてあげることはできないだろうか……」
旅人は実際に筆をとって空の絵を描いてみましたが、空の色がどうしてもうまく描けません。
「うーん……なんだか違うな。空はもっといろんな青が混ざり合った美しい色が広がっているのに……。」
地底には旅人の思い描く青色を表現できる染料がありませんでした。
旅人は一度地上に戻ると、空を見上げました。
外はちょうど夕暮れ時で、赤く焼けた空は瞬く間に色をかえていき、暗く濃い青から明るい青へのグラデーションを美しく空に描いています。
旅人は見上げた空をしばらくぼんやり眺めると、思い立ったかのように大きく息をつき
「……よし!」
と声を発して、地底の入口付近にある実も葉もついていない木の近くに腰を下ろすと静かに目を閉じ、祈りを捧げ始めました。
祈りは夜通し続き、いつしか空は白み始めました。
東の空が赤く染まる頃、旅人は目を開け地底の入口付近にある木に近づくと、不思議なことにその木は赤やオレンジの色をした葉と宵の空のような深い青色の実をつけていたのです。
旅人は急いでその実をつぶして染料にし、紙に筆を走らせるとそこには宵の空の色が描かれました。
再び筆を走らせると、そこには夕暮れ時のマジックアワーのような、深い青から薄い水色までの美しく青いグラデーションが描かれました。
「やった、これであの子に美しい空を見せてあげられる!」
旅人は実際の空の色を再現できたと喜び、早速空の絵を描くと、急ぎ足で地底に住む子供のもとに向かいました。
再び顔を合わせた夫婦の表情は一層暗くなっており、うつむきながら旅人をゆっくりと子供の寝室に案内をしました。
子供はベッドで眠っており、命の灯は今にも消えそうな様子でした。
夫婦と旅人はベッドの傍らで、時折苦しそうな声を上げながら眠る子供を静かに見守っていました。しばらくすると子供は意識を取り戻し目を開けたため、慌てて旅人は顔をのぞき込みました。そして旅人の顔を見てかすかに微笑む子供の視線の先に空の絵を掲げました。
「お待たせ。ほら、これが地上から見える空だよ。見えるかい?どうだい、綺麗だろ?この景色を今度はみんなで見よう。だから頑張って元気になろうね。」
絵を見た子供はその空の美しさに目を輝かせ、そしてゆっくりと笑顔でうなづきました。
すると不思議なことに、絵は輝き始め、描かれた空は実際の空と同じように夜空の色に変化し、星が輝き、それはやがて夜明けの色に移り変わりました。さらには明るく澄んだ青空に色味を変え、しばらくすると日暮れの夕焼け色へと変化し、空を映した子供の輝く瞳は再びマジックアワーの深い青色に戻りました。
そして絵から青い光が輝き放たれ、子供の体を優しく包み始めました。
突然の不思議なできごとに夫婦は目を丸くして動けずにいます。
その光が収まり再び静寂が訪れると、なんと子供はゆっくりと体を起こし始めたのです。そして夫婦が驚きあっけにとられる中、本人も目を丸くして恐る恐る立ち上がったのでした。
「……あれ……?僕……急に元気だよ……まだちゃんと、生きてる……よね?」
「ああ、なんて奇跡だ……こんなことが起こるなんて……空にいる神様がこの子を助けてくれたのか……ありがとうありがとう、旅人さんも、ありがとう……」
大人たちは泣きながら歓喜の声を上げ子供を強く抱きしめました。
この一連の出来事はあっという間に村中に広がり、青い空の奇跡としてその後も後世に語り継がれる伝説となったのでした。
子供を救ってくれたお礼に大人たちはその染料を使って旅人のためにマントを作りプレゼントをしました。
そのマントをまとった旅人は、それからの旅路で大きな病や負の力による呪いに侵されることもなく、世界を旅して回ることができたと言われています。
命を救われた子供は日に日に元気を取り戻し自らの足で地上にまで出られるようになり、ついにはその目で実際に空を眺めることができたのでした。
そして時が経ち大人になったその子供は、その種族の長となり、地上に出て青い実をつけた木のそばに村を移しました。
その後その青い実を染料として染めた衣類は病や呪いから身を守るという効果だけでなく、相手を敬う経緯の証として、大切な場で用いられるようになりました。
世界を旅をしているある旅人が、ある日地底に住むという種族の村を訪れました。
旅人はその村にしばらく滞在し、そこで多くの人たちと友好関係を築きました。
旅人はその村である表情の浮かない夫婦のことが気にかかり話しかけたところ、その夫婦はこのように答えました。
「私たちの息子は悪い魔女の呪いにかかり、それ以来重い病にかかったかのように寝込むようになったんです。医者にも見てもらいあらゆる薬を試したのですが、まったく効果がありませんでした。神にも祈りましたが何も変わりません。息子は日に日に弱っていき、今となっては歩くこともままならない状況です。はあ……弱っていくのをただ見ていることしかできなくて……息子のために何もできないことがとても苦しくてもどかしいのです。旅人さん、もし異国でこのような病状を治す手だてを見つけたら、是非教えていただけませんでしょうか。」
夫婦の話を熱心に聞いた旅人はその子供に会わせてもらうことにしました。
「こんにちは。私は偶然縁あってここを訪れた旅人だよ。気分はいかがかな?」
「こんにちは、旅人さん。僕はエルディオだよ。そうだね、気分は……あんまり良くないかな。もうずっとだけど。」
旅人と子供は少しの時間話をしました。
「そうか、君は空を見たことがないのか。」
「うん、生まれてからずっとここで暮らしているからね。ねえ旅人さん、空ってすごく綺麗なんでしょ?お父さんとお母さんから聞いたんだ。青い色をしていて、でも時間によってその色が赤やオレンジや紫に変わるんでしょ?すごいなあ、ああ……見て見たかったなあ……。」
子供は自分が知らない世界から訪れた旅人の話に興味深く耳を傾け、とても楽しい時間を過ごしました。地上に広がる空への憧れを耳にした旅人はどうにかその子供に空を見せてあげたいと思いましたが、その子供はもう歩ける状態ではなく、地上までの長旅に耐えられる体力も残っていませんでした。
そこで旅人はあることを思いつきます。
「空の絵を描いて見せてあげることはできないだろうか……」
旅人は実際に筆をとって空の絵を描いてみましたが、空の色がどうしてもうまく描けません。
「うーん……なんだか違うな。空はもっといろんな青が混ざり合った美しい色が広がっているのに……。」
地底には旅人の思い描く青色を表現できる染料がありませんでした。
旅人は一度地上に戻ると、空を見上げました。
外はちょうど夕暮れ時で、赤く焼けた空は瞬く間に色をかえていき、暗く濃い青から明るい青へのグラデーションを美しく空に描いています。
旅人は見上げた空をしばらくぼんやり眺めると、思い立ったかのように大きく息をつき
「……よし!」
と声を発して、地底の入口付近にある実も葉もついていない木の近くに腰を下ろすと静かに目を閉じ、祈りを捧げ始めました。
祈りは夜通し続き、いつしか空は白み始めました。
東の空が赤く染まる頃、旅人は目を開け地底の入口付近にある木に近づくと、不思議なことにその木は赤やオレンジの色をした葉と宵の空のような深い青色の実をつけていたのです。
旅人は急いでその実をつぶして染料にし、紙に筆を走らせるとそこには宵の空の色が描かれました。
再び筆を走らせると、そこには夕暮れ時のマジックアワーのような、深い青から薄い水色までの美しく青いグラデーションが描かれました。
「やった、これであの子に美しい空を見せてあげられる!」
旅人は実際の空の色を再現できたと喜び、早速空の絵を描くと、急ぎ足で地底に住む子供のもとに向かいました。
再び顔を合わせた夫婦の表情は一層暗くなっており、うつむきながら旅人をゆっくりと子供の寝室に案内をしました。
子供はベッドで眠っており、命の灯は今にも消えそうな様子でした。
夫婦と旅人はベッドの傍らで、時折苦しそうな声を上げながら眠る子供を静かに見守っていました。しばらくすると子供は意識を取り戻し目を開けたため、慌てて旅人は顔をのぞき込みました。そして旅人の顔を見てかすかに微笑む子供の視線の先に空の絵を掲げました。
「お待たせ。ほら、これが地上から見える空だよ。見えるかい?どうだい、綺麗だろ?この景色を今度はみんなで見よう。だから頑張って元気になろうね。」
絵を見た子供はその空の美しさに目を輝かせ、そしてゆっくりと笑顔でうなづきました。
すると不思議なことに、絵は輝き始め、描かれた空は実際の空と同じように夜空の色に変化し、星が輝き、それはやがて夜明けの色に移り変わりました。さらには明るく澄んだ青空に色味を変え、しばらくすると日暮れの夕焼け色へと変化し、空を映した子供の輝く瞳は再びマジックアワーの深い青色に戻りました。
そして絵から青い光が輝き放たれ、子供の体を優しく包み始めました。
突然の不思議なできごとに夫婦は目を丸くして動けずにいます。
その光が収まり再び静寂が訪れると、なんと子供はゆっくりと体を起こし始めたのです。そして夫婦が驚きあっけにとられる中、本人も目を丸くして恐る恐る立ち上がったのでした。
「……あれ……?僕……急に元気だよ……まだちゃんと、生きてる……よね?」
「ああ、なんて奇跡だ……こんなことが起こるなんて……空にいる神様がこの子を助けてくれたのか……ありがとうありがとう、旅人さんも、ありがとう……」
大人たちは泣きながら歓喜の声を上げ子供を強く抱きしめました。
この一連の出来事はあっという間に村中に広がり、青い空の奇跡としてその後も後世に語り継がれる伝説となったのでした。
子供を救ってくれたお礼に大人たちはその染料を使って旅人のためにマントを作りプレゼントをしました。
そのマントをまとった旅人は、それからの旅路で大きな病や負の力による呪いに侵されることもなく、世界を旅して回ることができたと言われています。
命を救われた子供は日に日に元気を取り戻し自らの足で地上にまで出られるようになり、ついにはその目で実際に空を眺めることができたのでした。
そして時が経ち大人になったその子供は、その種族の長となり、地上に出て青い実をつけた木のそばに村を移しました。
その後その青い実を染料として染めた衣類は病や呪いから身を守るという効果だけでなく、相手を敬う経緯の証として、大切な場で用いられるようになりました。
| 作品ID | n000004 |
|---|---|
| 作品名 | Real Fantasy物語 プルシャンブルーの伝説 ~宵闇と黎明の物語~ |
| 読切り/連載 | 読切り |
| クリエイター | shop Real Fantasy クリエイターページへ |
| カテゴリ | 歴史・神話 |
| 対象年齢 | 全年齢対象 |
| 紹介文 | 黎明暦700年 これはある地底の民の国の呪われた子供が、まだ見ぬ空に憧れた、奇跡の物語。 ---------------- この物語はReal Fantasyオリジナルアイテム、「黎明の祝福」にまつわるお話です。 実際のアイテムはshop Real Fantasyにて2026年9月に公開予定です。 |
| ハッシュタグ | 魔女 冒険 地底 空 |