トレジャーハンターの冒険 NEW!
2026-04-18
「ん?おい、ルシアン!見てみろ!これは……焚火の跡じゃないか?苔で見えずらいが、石が焦げた跡だよな、これ。」
「ああ、そのようだな。この崩れた岩の感じからして、おそらくここはかつて小さな洞穴になってたんじゃないかな。大方ここで雨宿りでもしていたんだろう。雪山に登ろうとした連中のキャンプ地だったのかもしれない。」
「待て!何か埋まってないか??」
「本当だ!よし、フェル!掘り出してみようぜ!」
ここはクリスタリアの町から少し離れた、雪山のふもとにある岩場。
雪山周辺の生態系について調査をしていた2人の学者は、地面のある異変に気づきました。
そこには箱のようなものの角が地面に少しだけ飛び出しており、学者は持っていたスコップでそれが傷つかないように慎重に掘り出していきました。
「おおお……古そうだけどわりと綺麗だな。」
「ああ、魔法の力で保護されているようだし、しっかり埋まってたからあまり風化されなかったのかもな。鍵は、、、かかってないみたいだな……。」
「よ、よし……開けてみようぜ……」
2人は恐る恐る、ゆっくりと箱を開けてみました。
「こ、これは……」
「金貨に宝石、豪華な装飾品、あとは日記に手紙に地図にコンパス……どうやら、ずいぶん昔に生きていた、トレジャーハンターの私物みたいだな。」
箱の中身をじっくりと丁寧に確認した後、ルシアンは箱の中にあった革の日記を破れないようにゆっくり開き、読み始めました。
““お前がこの日記を読んでるってことは、俺は戻ってこれなかったんだろうな。俺はもう長いこと、世界の希少アイテムを専門に活動してきたトレジャーハンターだ。これまで多くの危険を潜り抜けてきたし、腕にも、運にも自信がある。
しかし、今回ばかりは……俺にもどうなるかわからない……ターゲットは創世の神が残したと言われるあの伝説のクリスタルだ。
俺の持っている荷物、特に宝と大事なものをここに隠しておく。俺が生きて帰るまで見つかるんじゃねえぞ。なに、きっと大丈夫だ、今までだってこうやって何度も危機を乗り越えてきたんだ。クリスタルを手に入れて、すぐに取りに来るさ。願掛けとしてカギは開けておく。俺は生きて帰ってくるんだから、鍵なんて必要ないだろ?俺はトレジャーハンターの使命を全うするから、その後の運命は、神様に任せるぜ!
さあ、夜が明ける前に出発だ。””
ルシアンは日記の最後のページを読み終えると、溜息をついてそれを静かにフェルに手渡しました。
フェルもそのページを読み終えるとうつむき、静かに目線を箱の中に移しました。
「この日記の日付からすると、この箱ももう200年以上も前のものになるってことだな。」
それからフェルはページをさかのぼるようにペラペラとめくりはじめ、ある記述に目を止めました。
“本当にあるのかどうなのか、かなり嘘くさいが、この世界とは別の世界の地図を手に入れた。怪しい魔道士が持ってたものだ。この地図にある世界が本当に存在するのなら、ロマンのあるワクワクする話なんだがな。雪山でこの世の最高のお宝を手に入れたら、次はこの地図にある世界を目指してみるか。”
「この世界とは別の世界の地図、か……。」
確かに箱の中には見たことのない世界の地図が丸めて入れられていました。
「一度持ち帰って調べてみないとハッキリとしたことは分からないが、この箱の中のアイテムたちはかなり貴重な代物に見えるな。この持ち主だったトレジャーハンターはずいぶん腕が立っていたようだ。そしてもしかすると、俺たちはすごいお宝を見つけちまったのかもしれないな。」
「なんだよ、フェル。お前、本当に別の世界なんて信じてるのか?なかなかロマンチストじゃないか。そんな世界なんて聞いたことないぜ。」
「からかうなよルシアン。ただ、こいつの日記はどのページもワクワクするものだ。知ってるか?トレジャーハンターが探すお宝ってのは、主に2種類あるんだ。1つは金銭的なお宝。いわゆる金銀財宝だ。盗賊が奪った財宝、貴族や金持ちがため込んだり隠してたりしたもの、そういったものは国や町が滅ぶと瓦礫や地形に埋もれちまうから、それをトレジャーハンターは狙うんだ。
そしてもう1つは希少なアイテムの類。精霊の力を宿したアイテムや不思議な力を宿した道具たち、神由来の力を持った幻獣なんかもその1つだ。こういったものは希少性による金銭的な価値もあるが、世界に影響を与えられるほどの強大な力を手にすることができるってのが、このお宝の真価と言える。
だが、特に後者を手にするには往々にして危険がつきものなんだ。大きな力にはそれに引き寄せられた魔物がいたり、番人がいたり、罠がしかけられたりするからな。こいつはそういったものを専門にトレジャーハンティングをやっているんだ、きっと相当な実力者だったんだろう。」
「なんだ、やけに詳しいな、お前。」
「ああ、俺は子供の頃からこういう冒険物語が大好きだったからな。ばあちゃんがよく楽しそうに冒険者の話を俺にしてくれてたんだよ。この優秀なトレジャーハンターが、本当に別の世界を見つけてそこを冒険する物語を想像したくなったんだ。」
「あっはっはっはっ、今度は小説家にでもなるつもりか、お前。」
「ははは、それも悪くないかもな。この日記の内容だけで1冊本が作れそうだぜ。……ん?あれ?日記の一番後ろに何か書いてあるな。どれどれ……」
‘‘‘この日記を読んでるお前に頼みがある。俺はきっともうこの世にいないだろうからな、箱の中身は全部お前にくれてやるよ。結構なお宝だからな。感謝しろよ?ただ、その代わり1つだけ頼みがある。箱に入っている手紙を、届けてほしいんだ。頼む。俺の最後の願いだ、これだけはどうかかなえてほしい。もう頼める相手はこれを読んでるお前しかいないんだ。本当に、頼んだぜ。””
「……この手紙か……残念だったな、もう200年も経っちまってるからその届ける相手ももういない。あの世でお前ともう会ってるだろ?」
「じゃあ開けても問題ないだろ。」
「……そうだな……見てみるか。悪く思うなよ。」
フェルは少し緊張した様子でゆっくりと手紙を開くとそこには数枚の便箋が入っており、誰かに宛てた内容の文章が大きくハッキリした文字で書かれていました。
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愛するエリシアへ
突然のことですまないな。こうやってお前に手紙を書くだなんて、らしくないだろう?笑
でも大事なことだからちゃんと伝えようと思う。
どうやらもう俺はこの世にはいないらしい。
この手紙を届けてくれている人がいるということは、そういうことだ。
お前には父親らしいことは何もしてやれなかったな。
母さんが死んだ後でさえ俺は冒険にばかり出かけて、お前のことは何もめんどうを見てやれなかった。すまない。
ちゃんと飯は食えてるか?笑って暮らせてるか?幸せか?
今さら父親面しても仕方ないよな。
父親だなんて名乗る資格もないだろうし、父親だなんて思わなくても構わない。
ただ、俺にとってはお前が大切な娘であることに変わりはない。
俺のロケットに入っているお前の似顔絵はまだ10歳の頃のままだけど、今頃立派な大人のレディになっているんだろうな。お前は俺に似て器量がいいからな(笑)
俺の人生は最高の冒険だった。
トレジャーハンティングの途中に訪れたいろんな素晴らしい景色をお前と一緒に見られたらもっと最高だっただろうな。
あの世の母さんにも届くようにって、昔あいつと約束した、「世界一のトレジャーハンターになる」っていう夢はかなえられたのかどうかは分からねえが、それなりに悪くねえハンター人生だったぜ。
エリシア、世界は広いぞ!そして人生は自由だ!
お前もこの大きな世界を飛び回って、最高の人生にしてくれ!
いつかあの世でお前に会った時には、一緒に飯でも食おうぜ。
その時は、今度はお前の話を聞かせてくれ。
それじゃあな。幸せに生きろよ。
世界一のトレジャーハンター(自称)
ケイン・オーレリアン
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「…………」
「はっはっはっ、『自称』って!面白いやつだな。しかし、こいつには娘がいたんだな。ってことは、娘は父親の生死を知らないまま死んだってことか。この手紙、娘に届けたかっただろうな。ん?おい、どうしたんだ、急に黙っちまって。」
「…………っ!」
「お、おい、お前、泣いてるのか!?どうしたんだよ、そんなに肩を震わせて……!
しっかりしろよ……フェルディナンド・オーレリアン!?」