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Real Fantasy物語 ~勇者ジェミニの伝説 外伝~ -赤い翼の物語- NEW!

 2025-11-29

元になるお話はこちらから

勇者ジェミニの伝説

勇者ジェミニの伝説 クリスタル探索冒険記 -アレーシャの森編ー

 

これは、エルボス帝国がまだエルボスタウンという街だった頃のお話。

当時ヴァルグレア帝国に支配されていたエルボスタウンが、後に「赤翼革命」と呼ばれる革命を起こす歴史に残る1日をつづった物語。

 

 

 

「や、やめろ、ゴミ野郎が!!」

「何言ってやがる、人の者を盗んでおいてよく言えたもんだな。くたばりやがれ!!」

「ぐわっ!!!」

 

----黎明暦1705年。ここはエルボスタウン。国や街に馴染めない者たちや追い出された者たちが流れ着き、いつしか街になった場所。

 

そこには2万人以上の人たちが暮らしていました。

 

街とは言いつつも法律や統治する機関は存在せず、各自が思い思いに暮らしており、互いの利害を中心に成り立っている地域でした。

 

しかし3年前からエルボスタウンはヴァルグレア帝国の支配下にあり、街中ではヴァルグレア帝国の兵士たちが闊歩し、暴力や強要、搾取が横行していました。

 

「もう限界だ、ロッソ!今日も俺たちの仲間が1人やられちまった。この前は年寄りの家から金品を奪っていったんだぜ?あいつら好き勝手やってやがる!しかも誰1人外には出さねえつもりなのか、街の外に出ようとするやつがいないか見張りまでしてやがるんだ。俺はもう我慢ならねえよ!!」

「ああ、わかっている、アスル。もうすぐだ。もう少しで準備が整う……。」

 

とある廃屋の一室で5人のリーダーを中心におよそ20人ほどの人達が熱のこもった話し合いをしていました。

 

「エルボスタウンはならず者が集まった街だが、ならず者なりのルールと筋というものがある。人は感情の生き物だ。ルールがないってことは、感情がルールみたいなものさ。恩を受けたら恩を返す、やられたらやり返す、ムカつくやつらは始末する、仁義を欠いたらここじゃ生きていけねえってことをヴァルグレアの連中に思い知らせてやるよ。」

「待つのじゃ、ロッソ!感情の行きつく先は結局は欲と支配。結局はあのヴァルグレアと同じ野蛮な道を辿ることになるぞ!」

「黙れじじい!!だからといって仲間を殺されて黙っておけるのか?それが野蛮だというのなら、俺はその野蛮の道を修羅のように突き進んでやるぜ!」

 

エルボスタウンでは、街で力と影響力のある5人のリーダーであるロッソ、アスル、ジャロ、ブランコ、ネロを中心に反乱組織を結成し、ヴァルグレア帝国を倒す計画が進んでいたのです。

 

「ここ最近のヴァルグレアはすごい勢いでよその国や町の植民地化を進めているらしいぜ。」

「何やら気味のわりぃ魔女と取引をして魔物を使って他国を侵略してるって噂もあるな。」

「ああ、その情報は確認した!魔物に他国を襲わせてるんだ!あいつらの兵力は兵士と魔道士合わせても1000人ほどだが、どう考えても勝てない国も魔物の力を使って落としているんだ。」

「少し前にも、強力な護衛団で有名な国を一夜で滅ぼしたらしいしな。」

「国内でもいいうわさは聞かない。ずいぶん強引な政治をやっていて、圧政をしいているらしいし、従わないやつらをどんどん排除してるらしいな。」

 

次々と各々が持ち寄った情報を共有していきます。



ヴァルグレア帝国の支配下になってから、エルボスタウンの反乱組織は3年の間に組織を拡大させ、武器を集め、情報を集め、反逆の火種を小さく小さく、そして何よりも熱く燃やし続けていました。

 

5人のリーダーたちはエルボスタウンを5つのエリアに分け、それぞれの担当のエリアで活動をしており、定期的に集まっては情報共有と反旗を翻すタイミングをうかがっていました。

 

「それで。いつ、どうやって帝国に攻め入るかだな。」

「その前に、てめえらの担当エリアの組織はどのくらいの規模になったんだ?」

 

ロッソは威圧するかのように他の4人のリーダーたちに詰め寄りました。

「なんだてめえ、ロッソ。喧嘩を売っているのか?驚くなよ、うちは3000人だ。」

 

ジャロはロッソをにらんで言いました。

「ちっ、うちは2500だ。」

「2500!?おい、アスル!この雑魚め!俺は4000まで集めたぜ!」

「なんだ、お前ら。寝てたのか?私のところは5000だ。」

「ふんっ、エリアによって住んでる人数も違うだろ。うちは6000だ。」

「そうすると……全体でざっと2万人か……ってことは女、子供、年寄りも含めてエルボスのほとんどの民ってことだな。」

「ああ、これが民衆の意志だ。誰もが解放を願っている。」

「だが、武器は足りるのか?」

「ああ、さすがにまともな武器とはいかねえが、問題ねえ。2万人もいるんだ。粗末な武器でも数で押し切れる。帝国をぶっ潰すのに十分な威力はあるさ。」

 

エルボスタウンは裕福な街ではなく、貿易が盛んなわけでもないため、鋭い剣や槍のような上等な武器は限られており、ほとんどがこん棒や料理用のナイフ、木材を研いだ槍、といった粗末な武器でした。

 

「そんな武器で戦えるのかよ、ネロ!!お前、手を抜いてるんじゃねえだろうな!?」

「なんだと、ジャロ!?3000しか集められねえキサマの方が手を抜いてるんじゃねえのかよ!!!やる気がねえなら、消えろよクソ野郎!!!」

「てめぇらガタガタうるせえよ!!よえぇ奴らほどよく吠える!!」

「黙れ!まったく、血の気の多いやつらだ。俺たちはろくに魔法も使えねえし、ただ棒や斧、武器でぶんなぐるだけしか脳がねえ集団だが、何よりも自由を掴み取る強い意思がある!俺たちの自由は俺たちの力で勝ち取る!そして広い世界へ飛び立つ翼を取りかえす!」

「それで、いつ決行するんだ?偉そうに啖呵を切るんだ、何か作戦はあるんだろうな、キサマ?」

 

今度はネロがロッソを威圧するようににらみつけ詰め寄りました。

 

「ああ、もちろんだ。7日後だ。やつらの建国記念式典の日に、事を起こす!」

「……なるほど……ちょうど民衆も集まっているな。」

「そうだ。やつらが魔女や魔物とつながりを持っていたとしても、まさか民衆の前で魔物を呼び出すわけにもいかねえだろうし、それに式典は夕方から宴が始まり、警備も緩くなる。祭り気分に浮かれて油断しているはずだ。そのまま血祭りにして、俺たちの建国記念日に変えてやるぜ。目標はヴァルグレアの逆植民地化だ!やられたらやり返すのがエルボスの血。国王を討ち、軍を壊滅させ、国民どもを俺たちに従わせる。」

「ヴァルグレアの民どもはどうする?一緒に片づけちまうか?」

「いや、あえて狙わなくてもいいが、歯向かうなら容赦なく始末するまでだ。あくまでも潰すのは、国の王と軍だ。」

「よぉし、そうと決まれば、当日の動きはこうだ……」

 

それから5人のリーダーを中心に、集まった仲間たちは式典当日の行動について意見をぶつけ合いながらも夜明けまで詳細を話し合いました。



そして7日後、式典の当日。

 

ヴァルグレア帝国の城内には多くの国民が集まり、国王によるスピーチが行われていました。国王の笑顔とは裏腹に、王の周辺や集まった民衆の周囲には兵士たちが物々しい雰囲気で警備をしています。

国王のスピーチが終わると、民衆は拍手喝采を浴びせましたが、そのどの表情もかたく暗いものでした。

 

「ふん、国民が誰も笑ってねえじゃねえか。民は分かってるんだよ、国王の詭弁が。言ってることと、実際に民にやっていることが違いすぎる!」

「ああ、だがそれもこれで終わりだ。このクソみたいな国は俺たちがもうすぐ滅ぼしてやるさ……!」

 

城にこっそり潜入をしていたジャロとブランコは城の様子を見ながら怒りに震える声を必死に押し殺しながら話をしていました。

 

「おい……ジャロ!あそこを見てみろ!国王の右後ろの方に見えるじじいだ。あいつが魔女と取引の噂がある大臣だ。」

「あいつが一番厄介だと言ってたな。あいつだけはなんとしても仕留めねえとな……!」

「ああ、あのにやけ面を叩きのめしてやるよ……。」



それから式典は進み、宴の準備が始まりました。

エルボスタウンの5つのエリアの民たちは、それぞれヴァルグレア帝国を囲むように5つの位置にわかれ、行動開始の合図を待っています。



北東エリア。

「そろそろだな。合図は宴の時にあがる花火だ。みんな準備はいいな?」

「はい、アスルさん!全員覚悟は決めています!僕たちの街は僕たちの手で守る、みんな同じ気持ちです。」

「すまないな、お前の家族まで巻き込んでしまって。」

「いえ、これはみんな個人の意思です。ここでどうにかできなければ、どっちにしても良い未来なんてないですから。」

 

北西エリア。

「ジャロさん!!俺たちはとにかく突っ込んで、国王の首を討ち取ればいいんですよね?」

「ああ、そうだ。だが、そう簡単にはいかねえだろう。兵士たちが邪魔してくるはずだから、お前たちはそいつらの対応を頼む!」

「分かりました、ジャロさん!必ずジャロさんをお守りします!」

「へっ、そんなことはいいんだよ!これはエルボスのこれから何百年、何千年にかかわることだ。俺の命に代えても、エルボスの未来は守って見せるぜ。」

 

南東エリア

「おい、てめえら!!準備はできてんだろうな?」

「はい、ネロ様!全員命を捨てる覚悟です!!!」

「命は捨てるな!そして奪われるな!命を奪うんだよ!立ちはだかるやつらは全員まとめてぶっ倒せ!!あいつらが俺たちに何をしたのか思いだせ!!絶対に許すな!!死んでいった仲間たちの無念をはらすんだ!!」

「はい!!家族を奪われた恨みを、ここではらします!!!」

「そうだ!俺たちの自由の翼は真っ赤に染まるだろうが、それでも俺たちは飛ぶことはやめねぇんだ!」

 

南西エリア

「お前たち、しっかり私について来いよ!!数時間後には私たちエルボスタウンは自由の翼を手にしている!」

「ねえさん、俺たちは地獄まであんたに着いていくつもりだぜ!」

「いいか、野郎どもは前に出て積極的に戦え!女、子供は後方支援だ!襲われたら躊躇わずに思い切り急所をぶん殴れ!」

「ああ、心配しないでおくれ、ブランコ!あたしらはそんなやわじゃないよ!」

「ふんっ、そうだったね。じゃあ頼りにしてるよ!」

 

南中央エリア

「ロッソ!街にいる兵士どもは全員ぶっ倒したぜ。」

「おう、ご苦労!直に気づかれるだろうが、もうおせぇ。いよいよこの時が来たか……おい、作戦は覚えているな?」

「ああ、もちろんだ!全員で突っ込み、前線が兵士どもと戦っている間に中心部隊の100人が王のいる城に突撃する。そして国王と、大臣、この2人を確実に討つ。」

「そうだ。うまくいけば、各エリアの精鋭100人、計500人が王がいる城内に入り込めるはずだ。そのうちの誰かが国王と大臣を討ってくれれば……」

「……なあ、兄貴……俺たちどこまで生き残れるかな……?」

「ああ?何寝ぼけたこと言ってんだ、モラード!!!これから革命を起こそうってやつが、後のことを考えてどうする!?ここまできたら、生きるか死ぬかは運だ。考えたってしょうがねえ。覚悟を決めて今に集中するだけだ。」

「そ、そうだな……すまねえ……!」

「心配するな、俺が最高の景色を見せてやるよ!俺の中の血が騒ぐんだ、これはただの通過点に過ぎねえってな!ヴァルグレアなんざ取るに足らねえ。俺たちは世界すらとれるってな!!」

 

各エリアで緊張が走る中、宴開始の花火が城の屋上から盛大に打ちあがりました。

その音に導かれるかのように、各エリアのエルボスの民衆たちはその花火の音に紛れるかのように、城門を壊しながら一斉にヴァルグレア帝国の城内になだれ込みます。

 

完全に気を抜き、打ちあがる花火に気を取られていた兵士たちは城内の異変に気づくのが遅れてしまい、気づいたときには多くのエルボス民の侵入を許していました。

 

「いけー!!!!」

「俺たちの街を守るんだーーー!!!!」

「覚悟しろヴァルグレアー!!!!」

 

その城内の異変はすぐに国王や大臣のもとに届きました。

 

「陛下!!!!」

「なんだ、この騒ぎは!何が起きている!?」

「エルボスの民どもが城内に攻めてきました!!ものすごい数です!!!」

「な、なんだと!!!何をしている、さっさと返り討ちにしろ!!皆殺しにして構わん!!絶対にこの城に入れるな!!」

「だ、だ、大臣!!!」

「はい、陛下、すぐに魔物を呼び寄せます。が……わが国民が見ておる中ですがよろしいですか……?」

「くっ……し、仕方あるまい……尻ぬぐいはエルボスの愚民どもにさせよう。やつらがおびき寄せたとでも言っておけばなんとかなるだろう。」

「かしこまりました。では今すぐに。」

「おのれぇ……下等部族どもが……!!」

 

 

城内のいたるところで兵士とエルボスの民との戦いが繰り広げられました。

数は多いとはいえ、エルボスの民はロクに防具も身に着けていないため、兵士や魔道士の攻撃により次々と倒れていきます。

 

剣が交わる音や気迫のこもった雄たけびがいたる場所で、聞こえてきます。

 

城壁は壊され、魔道士が放った炎が引火し、城の様々な場所で火の手が上がっていました。

 

「よし、中心の城に入り込めたな!!!」

「おい、ロッソ!!お前たちもたどり着いたか!!」

「ジャロ!無事だったか!」

「ジャロ!ロッソ!」

「アスル!!……お前、その目はどうした!?それにすごい血じゃないか!!」

「大丈夫だ、ちょっと切られただけだ、問題ない。ここまで来たんだ、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

「はっはっは、貴様らくたばってなかったんだな!頼もしい馬鹿どもだぜ!」

「来たか、ネロ!!」

「ブランコは??」

「いや、見てねえ!」

「仕方ねえ、待ってるわけにもいかねえからな、進むぞ。結局ここまでたどり着けたのは俺たち含め100人くらいだったか。」

「100人いりゃ十分だ!だがここから先の兵士たちは精鋭だ!抜かるなよ、お前ら!」

「誰に言ってんだ、てめえは!てめえこそ、ビビッて逃げるんじゃねえぞ!!」

 

国王のいる中心の城にたどり着いた100人ほどのエルボスの革命中心部隊は、国王の間に向かい歩みを進めました。

 

その途中、道を塞ぐ警備兵を倒しながら進んでいきます。

 

一行が差し掛かった中庭には水が流れ、草花が咲き、鳥たちが優雅に歩いていました。

 

「豪勢な城を作りやがって、これも俺たちから奪った金で作ったんだろ……!」

 

唇を噛みしめるジャロはただならぬ気配を感じ顔を向けると、20人ほどの兵士たちがこちらに剣を向けて構えていました。

「おい、下等部族ども、ここから先には進ません。ここで切り伏せてやる。」

 

その様子を見た革命部隊のメンバーたちはすぐに声をあげます。

「兄貴!先に行ってくれ!!こいつらは俺たちで倒す!」

「ああ、そうだ、あんたらには王の首をはねる大事な役目がある!手下どもは全部俺たちに任せてくれ!」

「モラード、お前たち……」

「よっしゃてめえら、俺たちは先に行ってるから、王の間まで生きて来いよ!!待ってるからな!!」

 

リーダーたちは、他のメンバーに兵士の相手を任せると、足早に部屋を駆け抜けていきました。

 

ロッソ、アスル、ジャロ、ネロの4人が国王の間の前にたどり着くと、そこには3人の兵士が倒れており、ブランコが傷だらけになって残った1人の兵士に孤軍奮闘していました。

 

「ブランコ!!!!」

「おせえよ、のろまな野郎どもが!!!そこで見てろよ、今からこいつをあたしが叩きのめすから!!!」

 

しかしロッソは足取りがおぼつかないブランコを押しのけ、その兵士に剣を叩き込むと、兵士の盾は裂け、その兜は割れ、前のめりに倒れていきました。

 

国王の間の扉は硬く閉ざされていましたが、5人は何度も何度も一斉に体当たりを繰り返し、なんとか扉を壊し部屋の中に入り込みました。

 

そこには国王と王妃、そして大臣が身をかがめ、兵士と魔道士が2人ずつこちらを向き武器を構えて立っています。

 

そこへ中庭で20人の兵士たちを倒し駆けつけた革命部隊のメンバーが次々と部屋に駆け込んできました。

「お前らあいつらを倒せたんだな?」

「はい、後からこの城にたどり着いたメンバーが援護してくれたんです!そのメンバーたちも含めて200人くらいがもうじきここに到着しますよ。」

 

王の間の部屋の半分は革命部隊で埋め尽くされており、その全員が国王たちを睨みつけ今にも飛びかかろうとしていました。

 

「お、お、お、お前たち!!私が逃げる道を作れ!!!!この国王と王妃をなんとしても守るのだ!!!!だ、大臣、何をボケっとしておる!!お前も兵士たちに加わって道を開けろ!!!!」

王はパニックになった様子で大声でわめき散らします。

 

「自分の側近まで売るとはな……この外道が……!!」

必死な形相で叫ぶ国王を、白けた様子で眺めたアスルがボソッとつぶやきました。

 

「陛下……かしこまりました……こうなってしまった今、仕方のないことでございますね……」

そう口にすると大臣は黒い鏡を取り出し、魔法で宙に浮かべました。そして何かの魔法を詠唱すると、なんと中からたくさんの魔物が溢れだしてきました。

 

溢れだした魔物は見境なく暴れ始めました。

 

そして近くにいた国王と王妃に襲いかかり、あっという間に息の根をとめてしまいました。

 

次々とあふれ出てくる魔物は、窓の外にも飛び出し、ベランダから城の外へも溢れだしていきます。

 

「ちっ!!!てめえら、落ち着け!国王は死んだ!魔物を始末するぞ!!!」

エルボスの革命部隊は少しパニックになりながらも、ロッソの掛け声に正気を取り戻し、魔物と戦い始めました。

 

その戦いに紛れて大臣は部屋を後にし逃げ出そうとしましたが、アスルは見逃しませんでした。

 

「待てよ、外道!!この国の諸悪の根源が!貴様だけは絶対に許すわけにはいかねえんだよ!!!」

 

部屋の外に出て走って逃げる大臣は、後を追いかけたアスルに服をつかまれ後ろに倒れました。慌てた大臣はすぐに炎の魔法でこちらを攻撃してきましたが、その隙をついて、一緒に追ってきたネロが鋭い剣で大臣を一突きし、大臣は再び倒れこみました。

「ぐあああああ……ま、待て!待ってくれ!!!命だけはとらないでくれ!!何が望みだ!!!国王が死んだ今、私がこの国の王だ!なんでもお前らの望みを聞いてやるぞ!?」

「だったらてめえの命をもらおうか、この腐れ下衆野郎!!!」

「お、おい……いいのか?さっき魔物の軍勢を外から呼び寄せたんだぞ?私を殺したら、魔物は止められなくなるぞ?」

 

そう必死に訴えかける大臣の顔を見て、ネロはニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべました。

しばらくしてネロはアスルと一緒にその場を立ち去りました。

そこには赤く染まった絨毯と動かなくなった大臣だけが残されていました。

 

王の間では多くの革命部隊のメンバーと魔物が倒れており、黒い鏡は叩き割られ、魔物の出現は止まっていました。

 

ロッソは魔物の首を手に持つと、傷だらけになった他の4人のリーダーたちとともに王の間のベランダに出て、魔物の出現に混乱する民衆に向かって叫びました。



「見ろーーーーー!!!!!」

 

気迫のこもった、その大きく、そしてかすれた声に全員が王の間のベランダに目を向けました!

 

「聞け!!!!この国は魔物と繋がっていた!!!この部屋から溢れ出た魔物も、この国の大臣が呼び出したものだーーー!!!」

 

ロッソは魔物の首を民衆に見えるように高くかかげました。

 

「この国の王も、大臣も、全員死んだ!!!!王は魔物に殺され、その魔物と大臣は俺たちが殺した!!!!!」

 

突然のことに静まり返る民衆に向けてロッソは話を続けます。

 

「たった今、この国は終わった!!!そして、これより、ヴァルグレア帝国は、このエルボスが支配する!!今この瞬間からこの国は、エルボス帝国となったことを、ここに宣言する!!!!!!」

 

あっけにとられる民衆に向けて今度はネロが叫びます。

 

「残念ながら、もうしばらくするとここは魔物の軍勢に襲われる!全員武器を持って戦え!!性別も年齢も関係ねえ!黙っていたら全員魔物に殺される!!!戦え!!!!俺たちの命は俺たちの手で守る!俺たちの未来は俺たちの手で切り開くんだ!!!」

 

そう話しているそばから、魔物の軍勢が城になだれ込んできました。

 

「さあ、全員戦え!!!必ず勝利を掴もう!!!これが我らエルボス帝国の初陣だ!!!!」

 

再びロッソが叫ぶと、民衆のいたるところで雄たけびが上がり、そして城内に現れた魔物たちと戦い始めました。

最初に雄たけびをあげて飛び出したのは、演説を聞いていた革命部隊の若いメンバーでした。それにつられるかのように、ヴァルグレアの民衆も次々に武器を手に取り、その場の全員が国も身分も関係なく魔物と戦ったのです。

 

暗闇に閃光が走り、激しく燃える炎で夜空がオレンジ色に染まり、繰り返される激しくそして悲しいその音や色は、しばらく続いた後、時間とともにゆっくり静まっていきました。




「兄貴!……兄貴!!!……大丈夫か!!!」

「あ……ああ……モラード……か……魔物は……どうなった……?」

「ああ、おそらく全部倒したよ。」

「そ……そうか……あいつらは……みんな無事か……?」

ロッソのその問いかけにモラードはうつむき、首を左右に振りました。

 

「……アスルもジャロも魔物と戦って死んじまった。ブランコは兵士との戦いで、そもそも戦える状態じゃなかった。それでも最後まで戦い抜いて死んじまった。ネロは……生きてたんだけど、その……兄貴をかばった傷が致命傷だったみたいで、ついさっき死んじまったよ……。」

「……そうか……」

ロッソは仰向けに倒れたまま、夜が明けすっかり明るくなった澄んだ空をぼんやり眺めながら、静かに涙を流しました。



戦場と化したヴァルグレアの城は、戦いの影響で様々な場所が崩れ落ち、廃墟のようになっていました。

エルボスの民の生き残りはわずか1500人、ヴァルグレア帝国軍は全滅、こうしてヴァルグレア帝国は滅び、壮絶な結末の末、エルボス帝国が誕生したのです。

 

その後、5人のリーダーのうち唯一生き残ったロッソがエルボス帝国初代国王となり、命をかけ自由を勝ち取った5人のリーダーたちを称え、5つの星が輝き、自由を願った翼が国旗に描かれることとなりました。

そして時を超え、エルボス帝国は後に勇者ジェミニが魔王を倒し世界を救うための大きな力になるのでした。



多くの犠牲を強いられたこの革命物語は『赤翼革命』と呼ばれ、世界の歴史にも深く刻まれ後世にまで語り継がれることになりました。

 

エルボス帝国が生まれたその日、城内から赤く染まった翼を羽ばたかせた5羽の鳥たちが、青い空を飛び立っていったという逸話とともに。

 

 

 

Real Fantasy物語 勇者ジェミニの伝説 外伝 赤い翼の物語 完

 

 

勇者ジェミニの世界を形作る他の物語も是非覗いてみましょう。

Real Fantasy物語 ~勇者ジェミニの伝説 外伝~ -光と影の物語-

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